ARMは、年次イベント「ARM Tech Symposia 2016」に合わせて開催した会見で、マイコン向けプロセッサコアの新プロダクト「Cortex-M23」「Cortex-M33」や、IoT(モノのインターネット)デバイスの管理に用いるクラウドプラットフォーム「mbed Cloud」などについて説明した。
ARMは、年次イベント「ARM Tech Symposia 2016」(2016年12月2日、東京コンファレンスセンター・品川)に合わせて開催した会見で、同年10月に発表したマイコン向けプロセッサコアの新プロダクト「Cortex-M23」「Cortex-M33」や、IoT(モノのインターネット)デバイスの管理に用いるクラウドプラットフォーム「mbed Cloud」などについて説明した。
会見に登壇したARM IoTビジネスユニット 部長補佐兼マーケティングおよびセールス担当バイスプレジデントのマイケル・ホーン(Micheal Horne)氏は「IoTは思ったほど伸びないという意見もあるが、ARMはそうは見ていない。ウェアラブルなどのコンシューマー製品、スマートファクトリー、スマートシティ、スマート照明などで広がりを見せており、その流れを加速させたいと考えている」と語る。
ホーン氏は、IoT向けのプロセッサコアへの要求として、効率性、セキュリティ、スケーラビリティの3点を挙げる。そして、Cortex-M23/M33のベースとなる新アーキテクチャ「ARMv8-M」では、同社が「TrustZone」と呼ぶセキュリティ拡張機能の搭載によって、通信でつながるIoTデバイス向けのマイコンに求められるセキュリティを大幅に強化したことが特徴となっている。
従来TrustZoneは、アプリケーション処理用プロセッサコアである「Cortex-Aシリーズ」に採用されていた拡張機能だ。ARMv8-Mでは、Cortex-Aシリーズで実証されたTrustZoneをリソースの少ないマイコン向けに仕立てた「TrustZone CryptoCell-312」を採用した。
また、ARMv8-Mを用いたSoC(System on Chip)の開発を容易にするため、さまざまなIPやライブラリ、ソフトウェアライブラリ、OSなどとの連携が可能になる「CoreLink SIE-200」と「CoreLink SSE-200」を用意した。さらに、Bluetooth 5やZigBee、Threadなどの802.15.4ベースといった低消費電力無線通信接続のIPとなる「Cordio」も加えている。
IoTを強く意識したこれらの改良を加えたARMv8-Mをベースに開発された、プロセッサコアの新プロダクトがCortex-M23/M33である。
Cortex-M33は、従来のアーキテクチャ「ARMv7-M」をベースとする「Cortex-M3」「Cortex-M4」の後継となる。コプロセッサインタフェース、DSP、浮動小数点計算などの構成オプションを備える、いわゆる“高性能マイコン”向けのプロセッサコアとなる。Cortex-Aシリーズで最小となる「Cortex-A5」よりもチップ面積が80%小さいとしているが、これはTrustZone対応プロセッサコアでの比較という意味合いだろう。
一方、Cortex-M23は、いわゆる“低消費電力マイコン”向けのプロセッサコアである「Cortex-M0/M0+」の後継だ。Cortex-M33と比べてチップ面積が80%小さく、消費電力も半分にとどまる。「環境発電型のIoTデバイスの開発が可能になる」(ホーン氏)としている。
Cortex-M23/M33は、既にアナログ・デバイセズ(Analog Devices)、マイクロチップ(Microchip)、ヌヴォトンテクノロジー(Nuvoton Technology)、NXPセミコンダクターズ(NXP Semiconductors)、ルネサス エレクトロニクス、シリコン・ラボラトリーズ(Silicon Labs)、STマイクロエレクトロニクス(STMicroelectronics)の7社がリードパートナーとして名乗りを上げている。
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