駆動用バッテリーでは、電極の生産工程に異業種の技術を応用した。電極材料の粉末と液体はダマにならないように均一にペースト状に混練しなければならない。
従来は大釜で一気に湿潤/溶解/分散させるバッチ混練だったが、均一に混ぜるために時間がかかる欠点があった。食品業界の技術に倣って、小麦粉と水を混ぜる時のように少しずつ混ぜていくことで短時間で均一に混練できる装置を開発した。
電極材料を銅箔に塗布する工程では、印刷業界と鉄鋼業界の技術を応用した。先述した均一に混ぜた材料を銅箔に塗る際、電池の性能向上のためには両面に均一に塗布する事が不可欠となる。ここでは写真のフィルムを作る印刷技術を応用し、銅箔と材料を安定して接着させる技術を開発した。
電極材料を塗布した後は、膜厚を薄く均一につぶす工程が続く。電極の膜圧はミクロンオーダーで均一化することが求められる。課題となっていたのは膜圧を一定にするためのローラーが発熱することだ。熱によって膜圧がばらついてしまうためだ。これに対し、鉄鋼業界の技術を借りてローラーの発熱を抑える水冷機構を搭載、膜圧を測定/監視しながら品質を維持する技術を開発した。
近藤氏は、ハイブリッド車や電気自動車は市場が拡大していくこともあり、さらなる生産の効率化に取り組みたいと述べた。異業種の技術でも有益なものは多く、他の業界に積極的に学びたいとしている。
トヨタ自動車では、設計部門が製品開発した後で、生産技術部門が工法を決定、さらにその後で設備部門が生産設備を開発するという流れで進んでいた。これでは、各部門の開発に要した時間が積み上がっていくため、開発期間の短縮が難しい。
近藤氏は、製品設計、生産技術、生産設備の全てを同時並行で今後進めていくと説明。そのためには、工作機械業界に設備の革新だけでなく製品設計にも積極的に関わってほしいと述べた。
これまでは自動車メーカー側から設備仕様を打診していた。工作機械メーカーの検討と自動車メーカーの承認を繰り返し、設備の実機が完成するのを待って評価するという形だった。今後は、設備のコンセプトの共有からスタートし、実機の試作と評価のサイクルを早めていきたいという。
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