MathWorksは、モデルベース開発環境「MATLAB/Simulink」の最新バージョン「R2016b」などで強化したビッグデータ処理機能について説明。「MATLABという共通言語によって、IoTとなる組み込み機器と、バックエンドインフラのITシステムのワークフローを統合できる」(同社)という。
MathWorks Japanは2016年10月19日、東京都内で会見を開き、モデルベース開発環境「MATLAB/Simulink」の最新バージョン「R2016b」などで強化したビッグデータ処理機能について説明した。
来日した米国本社MathWorks コンサルティング アプリケーション エンジニアのローレン・シュア(Loren Shure)氏は「IoT(モノのインターネット)に注目が集まることにより、あらためてビッグデータの活用が重視されるようになった。これらのビッグデータ処理において、現時点で課題になっているのは、センサー情報を中心としたIoTから得られるビッグデータだろう」と語る。
MathWorksでは、従来のIT系のビッグデータをビジネスデータ、IoTから得られるビッグデータをエンジニアリングデータに分類している。「今後は、ビジネスデータの分析に加えて、エンジニアリングデータに基づく分析、エンジニアリング駆動分析(Engineering-Driven Analytics)を融合させることが重要になる」(シュア氏)という。実際にガートナーの調査でも、映像や画像、音声、センサーといったエンジニアリングデータが、今後の活用対象として挙げられている。
そういった、ビジネスデータとエンジニアリングデータを融合した分析システムを構築する上で力を発揮するのが数値計算ソフトのMATLABである。MATLABは、車載機器をはじめ制御システムのアルゴリズム開発で広く利用されている。それらの製品が通信接続されIoTとなって得られるエンジニアリングデータを収集/分析した上で機械学習などの要素を加えてモデルベース開発のワークフローに組み込めば、より最適な製品開発が可能になるというわけだ。
さらにMATLABはビジネスデータとの連携も可能だ。組み込み機器の開発に利用しているMATLAB/Simulinkのユーザーにはあまり知られていないが、MATLABは金融系システムにも広く用いられている。このため、一般的なITシステムとのインタフェースも豊富に有しているのだ。「MATLAB Production Server」や「MATLAB Compiler SDK」などのオプションツールを使えば、サーバ上でMATLABプログラムを簡単に運用できる。
シュア氏は「MATLABという共通言語によって、IoTとなる組み込み機器と、バックエンドインフラのITシステムのワークフローを統合できる」と強調する。
実際にオーストラリアの設備メーカーBuildingIQが、MATLABによって統合されたワークフローの活用によって、制御アルゴリズムをリアルタイムで最適化するシステムを構築した事例がある。設備のエネルギー消費を従来比で15〜25%削減することに成功したという。
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