続いての出走は、4年前に初優勝し、2015年は強豪 GRAZ工科大学に次ぐ2位の有力校、京都工芸繊維大学のGDF-11です。車体を大きく見直し、リアのバルクヘッドはアルミの削り出しに。また、ついに前後に大きなエアロデバイスを装着してきました。2015年に小差で2位に甘んじたことの悔しさの表れでしょうか(私の勝手な推測です)。
エンジンは引き続き軽量高出力のスズキ「LTR450」ですが、ボアアップにより474ccまで排気量を上げています。ホイールベースは1750mmとトップ6で最長(U.A.S.Grazはガイドブックにスペックが載っていないのですが、写真で見る限り1600mm程度だと推測されます)、名古屋工業大学のN.I.T.-14はレギュレーション+5mmの1530mmにセット。このあたりも直進安定性と旋回性のバランスを考えて、各チームの設計思想が表れるところです。
対する日本自動車大学校のFNN-07はホンダ「CBR600」の4気筒エンジンを横置きにマウントしています。エアロデバイスはリアのディフューザーのみ、ホイールベースは1650mmと、前回のマシンよりも伸ばしたようです。
日本自動車大学校の車両は大きなエアロデバイスがないため軽量コンパクトに見える車体ですが車重は260kg、対して京都工芸繊維大学のGFD-11は200kgと軽量に仕上がっています。これは単気筒エンジンと4気筒エンジンの差ですが、エンジン単体の重量だけでなくハイパワーな4気筒エンジンに耐えうる強度を持つフレーム構造などが要因となります。
ちなみに4気筒エンジンを搭載したマシンのうち、最軽量なのは中国の同済大学(Tongji University)の車両です。スズキ「GSXR600」のエンジンを搭載、スチールパイプのスペースフレームとカーボンファイバーのボディで204kgを実現しています。
さすがに強豪チーム同士、両チームの第1ドライバーは1分4〜5秒のラップタイムを安定して刻んでいきます。単気筒マシンは軽量さによるコーナリングスピードとコーナー立ち上がりのピックアップの良さで、4気筒マシンはパワフルな加速でタイムを稼ぎます。
京都工芸繊維大学のGFD-11は加速時に「シューン」という吸気音(?)を伴った単気筒らしいリズミカルな排気音を響かせ快走。日本自動車大学校のFNN-07は上向きにセットされたサイレンサーからの排気音がエレクトリックシフターによる素早いシフトアップと見事にシンクロし、実に心地よく、華麗な走りです。
スタート時の位置関係がほぼ変わらない状態で第1ドライバーがピットエリアに入ります。日本自動車大学校のFNN-07は2分30秒余りでスムーズに第2ドライバーに交代してリスタート。京都工芸繊維大学のGFD-11は単気筒エンジンの宿命、熱間始動性の悪さでセルモーターが回る音は聞こえますが、なかなか始動しない。しばらくすると湿った排気音とともに低い回転数でエンジンが回り始め、スロットルを徐々に開けていくと単気筒レーシングエンジンらしい弾けるような排気音でリスタートしました。私たち観客も胸をなでおろす瞬間です。
第2ドライバーでは少し差がつきました。京都工芸繊維大学のGFD-11は1周目から1分3秒台をマーク、3周目には1分2秒324のベストラップをたたき出し、観客席で見守るチームメイトからは大歓声です。対する日本自動車大学校のFNN-07も1分5秒台からスタートし、最終ラップでは1分3秒730のベストラップ、20周でパイロンタッチゼロの素晴らしい走りを見せてくれました。
結果は京都工芸繊維大学がトータルタイム1284秒545+2秒(パイロンタッチ1回)の1286秒545、エンデュランス審査2位、総合1位と4年ぶりの総合優勝を飾りました。おめでとうございます!これで第15回大会は栄光のゼッケン1番です。日本自動車大学校はトータルタイム1293秒100のエンデュランス3位、総合で5位と前回よりも順位を一つ上げました。おめでとうございます!
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