試乗していて気になったのは、発表されているポイント以外の改善点だ。例えばシャシーに関しては何の発表もないが、全く従来のままである訳がない。確認してみると、実は細かな熟成が施されていた。
「シャシーについても細かい見直しは行っています。例えば、数値上のボディー剛性は変わっていませんが、各パネル接合部の締結ポイントを増やすことで剛性を高めています。フロントのダンパーはダンパーオイルを変更して、粘度を変えずに周波数を変えるチューニングを行うことでよりしなやかな特性を追求しました。スタビライザーのブッシュ剛性を少し落として、動き始めのしなやかさもこだわりました」。そう語るのはマツダ 車両開発本部操安性能開発部でアクセラのシャシーを煮詰めた豊島由忠氏である。
このあたりの改良は、乗り比べないと気付かないほど微妙なものだが、アクセラの走りを確実に進化させている。入念なチューニングによって、新しい排気量1.5lのディーゼルエンジン搭載車は全てがうまくマッチングしているようだった。最後に試乗した「15XD」は、絶妙な乗り味を魅せてくれたのである。
フラットなライド感、ステア操作に素直に反応する旋回モーメントの立ち上がり感、乗り心地のしなやかさなど、ダンパー/スプリング/ブッシュのマッチングの良さに、思わず頬が緩むほど運転が気持ちいい。車体の重量バランスの良さもこのフィールを生んだ要素の一つだろう。
この乗り味は、16インチタイヤとの組み合せならではの感触だろう。これが18インチになるとホイールが重くタイヤが頑張ってしまい、ブッシュやダンパーの仕事が増えて22XD(排気量2.2lディーゼル)に乗り味が近づいていくはずだ。
15XD(排気量1.5lディーゼルエンジン)のパワーユニットの感触からいえば、22XD(排気量2.2lディーゼル)ほど全域トルクの塊といった印象はないが、それでいて15S(排気量1.5lガソリン)より確実に力がある。あらゆるシーンで力強い加速感が楽しめる、シャシーに見合ったパワーだ。排気量2.0lガソリンエンジンとは走りのキャラクターが被ってしまい、燃費性能でこちらが上回ってしまうため、バッティングを避けてラインアップから外されたのは納得できる。
しかし、15XD(排気量1.5lディーゼルエンジン)に気になるところもない訳ではない。エンジンは2500rpmを越えると徐々に騒がしさが高まっていき、ディーゼルらしさが顔を出してくる。同じディーゼル4気筒でも、22XD(排気量2.2lディーゼル)の繊細なチューニングほどには突き詰められていない印象を受けた。
それでも高回転域(と言ってもディーゼルなのでせいぜい5000rpmだが)まで引っ張って加速させれば、気持ちいい伸びやかな感触が味わえる。どちらにせよディーゼルらしさを残していることは、個性として認めていい。
1人で乗って楽しく、家族と移動する時にも快適。新たに加わった15XD(排気量1.5lディーゼルエンジン)こそ、アクセラらしさ、マツダらしさが最大限に味わえるモデルと言えそうだ。
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