セイコーエプソン側で事前に用意したアプリでは、タブレット端末を操作すると複数のMOVERIOに同じ映像が表示される。子どもたちはこのシステムを利用して、各グループでまとめた「森への考え」を発表し合った。MOVERIOをかけた聴講側の子どもたちの目の前に、発表グループの考えたクイズのスライドなどが大画面で目の前に浮かび上がり、子どもたちからは大きな歓声が上がっていた。
今回の取り組みでは、小学生の子どもたち相手にあえて「ハッカソン」「開発」という言葉を使っている。その狙いについて津田氏は「“開発する”とはどういうことなのかを身をもって体験してもらいたかった」と語る。
「今の子どもたちは普通にスマホやタブレットを扱い、アプリケーションというものを知っている。そのアプリケーションを開発しようと提案した時、『え? ボクたちがそんなことできるの?」という反応だった」(津田氏)。
一方、小学生をサポートする側の若手エプソン社員への効果も見逃せないという。子どもたちから出てくるアイデアはモノづくりの行程では「要件抽出」に相当する。若手社員はそれを持ち帰って、整理し、何を作ればいいか考える。
「社外に出ることで組織が活性化し、新たな発想も生まれてくる。社内の仕事だけでは、未熟な新人が得られる達成感は査定だけ。むしろこのような実体験のなかで達成感を得、活性化していくと、組織もうまくまわるのではないか」(津田氏)。
子どもたちは白紙単元で学習してきた“森の大切さ”について、スマートグラスという最先端の情報機器を使って「誰に、どのように伝えれば関心や理解を得られるか」というコミュニケーションのあり方について学ぶわけだが、同時にサポート側の若手社員にもコミュニケーションスキルの向上効果をもたらしているというわけだ。
今後は、来月の2016年9月に2回目のハッカソンを予定しており、実際に最終的なものを組み立て、完成させる予定。また、子どもたちに「達成感」を味わってもらう意味で地元の人向けに発表する機会・場面を提供する予定で、公開授業の他、諏訪市内の工業イベントや展示会などで開発したものを発表していき、2016年11月に予定されている白紙単元の総括発表が最終ゴールとしている。
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