パナソニックは、Tesla Motors(テスラ)の新型電気自動車「モデル3」の好調な受注を背景に、モデル3向けの車載リチウムイオン電池の生産工場「ギガファクトリー」の立ち上げを前倒す方針を明らかにした。
パナソニックは2016年7月29日、東京都内で会見を開き、2016年度(2017年3月期)第1四半期(4〜6月期)決算について説明した。同社は同日に4000億円以内をめどとする社債発行も発表しているが、その主な用途として挙げたのが車載リチウムイオン電池の生産工場への投資だ。Tesla Motors(テスラ)の新型電気自動車「モデル3」の好調な受注を背景に、モデル3向けの車載リチウムイオン電池を生産することになる工場「ギガファクトリー」の立ち上げを前倒す方針を明らかにした。
パナソニックの2016年度第1四半期の売上高は前年同期比6%の1兆7485億円、営業利益は同13%減の669億円だった。売上高については、白物家電の販売好調などにより、急激に進行した円高の影響を除いて同1%の増収を確保した。一方、営業利益は2016年4月に発表した成長戦略に向けた投資により固定費が増加し減益となった。同社取締役専務の河井英明氏は「当初から織り込み済みであり、利益面での円高の影響も合理化などでカバーできた」と語る。
2016年度は、成長への足場固めとして先行投資を進めて行く。その金額は2018年度まで累計で1兆円に達する。住宅と車載分野における人員増と研究開発を中心に「成長事業への仕込み」(河井氏)を進めている。
社債発行で調達する4000億円の使途となる、車載リチウムイオン電池工場の立ち上げ前倒しも、成長のための先行投資の1つに位置付けられている。ギガファクトリーは、2017年内の納車を目指すモデル3に生産に合わせて、2017年中の生産立ち上げを予定していた。しかしモデル3の予約は30万台を超えるなど好調なこともあり、「当初はなだらかに立ち上げるイメージだったが、この需要に対応することを最優先に前倒すことにした」(河井氏)という。
なお2017年から生産を開始する予定の、中国・大連の車載リチウムイオン電池工場にも投資を追加し、生産立ち上げを前倒す方針だ。
成長事業に位置付けられている車載リチウムイオン電池の一方で、ノートPCやスマートフォンといったICT機器向けのリチウムイオン電池は厳しい状況が続いている。河井氏は「ICT機器向けの落ち込みを車載と乾電池がカバーして、エナジー分野は増収になった。ただし今後もICT機器市場の厳しさは変わらないだろう」と述べている。
この厳しい状況にあるICT機器向けが中心だった、ソニーの電池事業は、村田製作所に譲渡することになった(関連記事:不透明感広がるソニーの1Q決算、電池事業は製品力で巻き返せず譲渡へ)。先行して車載分野に展開していたことでICT機器市場の落ち込みをカバーすることができたパナソニックとは対照的だ。
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