電子レンジと同じ原理で“最高の外科”を実現、日機装が世界初の製品化医療機器ニュース(1/2 ページ)

日機装は、電子レンジなどで用いられているマイクロ波を活用した外科手術用エネルギーデバイス「アクロサージ」を製品化した。2016年8月から国内の6医療機関で臨床試用を、2017年1月から販売を始める。2021年には年間売上高50億円を目指す。

» 2016年07月29日 07時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

 日機装は2016年7月28日、東京都内で会見を開き、電子レンジなどで用いられているマイクロ波を活用した外科手術用エネルギーデバイス「Acrosurg(アクロサージ)」を製品化したと発表した。同年5月に厚生労働省から製造販売承認を受けており、8月から国内の6医療機関で、約30の症例に対して臨床試用を始める予定。2017年1月から販売を始め、2021年に年間売上高50億円を目指す。

日機装の甲斐俊彦氏(左)と滋賀医科大学バイオメディカル・イノベーションセンターの谷徹氏(右) 日機装の甲斐俊彦氏(左)と滋賀医科大学バイオメディカル・イノベーションセンターの谷徹氏(右)。両氏の手前にあるのが「アクロサージ」だ(クリックで拡大)

 現在、外科手術用エネルギーデバイスとしては、高周波や超音波を用いるものが主流だ。高周波、超音波とも、外科手術の対象となる組織表面を加熱することになる。これに対してアクロサージは、電子レンジと同じ2.45GHz帯のマイクロ波を使って生体組織を焼灼する。生体組織の水分子にマイクロ波が直接作用し、水分子が発熱するので、生体組織の外側だけでなく内側も加熱される点で、高周波や超音波と大きく異なる。

従来技術と「アクロサージ」で用いているマイクロ波の違い 従来技術と「アクロサージ」で用いているマイクロ波の違い(クリックで拡大)

 マイクロ波を用いるエネルギーデバイスは、1981年に針状のプローブ型で実用化されているが、アクロサージはハサミ型と鑷子(ピンセット)型もそろえる。マイクロ波を用いたハサミ型と鑷子型の外科手術用エネルギーデバイスは世界初となる。滋賀医科大学バイオメディカル・イノベーションセンター 特任教授である谷徹氏が開発した高効率のマイクロ波技術を応用することで、世界初となる製品化を実現した。

 日機装社長の甲斐俊彦氏は「2012年から谷先生にご協力いただくことで、ついに製品化することができた。当社の医療機器事業は、国内シェア50%の透析関連装置が中心だったが、近年になって急性血液浄化療法(CRRT)や、人工すい臓による血糖管理など、急性期医療の事業も手掛けるようになっている。外科手術に用いるアクロサージも同様に、急性期向けの製品となる。ラテン語で『最高の』を意味する『アクロ』と『外科』を意味する『サージ』から命名したので、その名に恥じない製品として展開していきたい」と意気込む。

 またアクロサージの基礎技術を開発した谷氏も「高周波や超音波を使う既存の外科手術用エネルギーデバイスと比べて高い性能を実現できた。産学官のオープンイノベーションの成功例でもある。アクロサージの製品化は、患者、医療人、社会の全てにとって大きなメリットのあるものになるだろう」と強調する。

「アクロサージ」を用いた施術の様子「アクロサージ」を用いた施術の様子「アクロサージ」を用いた施術の様子 「アクロサージ」を用いた施術の様子(動物実験)。血管の切断も封止と同時に行えるので、出欠が少なくて済む(左、中央)。困難な手術といわれている胆管切断による胆のう摘出も極めて容易になるという(右)(クリックで拡大) 出典:日機装
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