脚光を浴びるIoT(モノのインターネット)だが、製造業にとってIoT活用の方向性が見いだしきれたとはいえない状況だ。本連載では、世界の先進的な事例などから「IoTと製造業の深イイ関係」を模索していく。第1回は、Eコマースの雄であるAmazon(アマゾン)の取り組みを見て行こう。
製造業におけるIoT(モノのインターネット)は、業務の効率化や生産性向上、コスト削減などの観点から活用されることが多いが、本連載ではITの観点から「サービス化」に着目して行きたい。このサービス化の流れにいち早く乗ったのが、オランダのPhilips(フィリップス)だ。同社のCEOは、主力製品の電球について以下のように語っている。
LEDの普及により、電球は以前のように販売数の確保が難しくなった。そこでフィリップスは、電球を用いた緊急通報や、可視光通信技術である「Li-Fi」を活用したクーポン配信、街の街灯の一元管理ソリューションなど、「電球のサービス化」による新たな収入源確保に成功している。つまりIoTとは、これまでのようにデバイスを売って終わりではなく、デバイスをサービス提供の手段として新たな顧客接点を持続し続けることを指すと考えている。
アマゾンが私たちの生活に根付いて久しい。Amazon.comをEコマース(EC)サイトとして利用している読者は多くいるだろう。しかし、このアマゾンが家電メーカーをはじめとした製造業と、単なる「製品販売」を超えた密接な関係を持っていることをご存じだろうか。
連載の第1回目では、上記したアマゾンの取り組みを取り上げ、特にIoTと製造業がどのようにすれば深イイ関係になれるか、海外の事例を中心にご紹介しつつ、筆者なりに何かしらのヒントをご提供していければと考えている。
近年のアマゾンの取り組みの中で、われわれ消費者にとっても、製造業にとっても新境地を開いた製品がある。それが「Amazon Dash Button(以下、Dash Button)」と呼ばれる、ばんそうこうサイズのデバイスだ。アマゾンはDash Buttonを2015年3月末からプライム会員に提供していたが、現在では一般向けにも4.99米ドルで販売されている。なお、現時点での展開地域は米国のみとなっている。
Dash Buttonを簡単にいえば「自動販売機のボタン」だ。各ボタンが特定の商品とひも付けられており、ボタンを押すだけで事前に設定済みの商品が、設定個数分だけ自動配送される。例えば、洗濯の時に洗剤がなくなりかけていることに気付くと、洗濯機に貼りつけたDash Buttonを押すだけでその洗剤が届けられるという仕組みだ。
飲み物やタバコの自動販売機のように押せば製品が出てくるというものではないが、気づいたときにその場で注文できるため面倒がない。万が一誤ってボタンを押した場合でも、スマートフォンからキャンセルが可能だ。サービス開始当初、Dash Button対応製品は18種類しかなかったが、今では100種類以上のDash Buttonが展開されている。
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