自動運転技術の開発が進む中で、ドライバーの状態を判断するためのさまざまな技術も開発されている。カメラやセンサーで検出した脈拍や視線の向き、目の開き具合、着座姿勢などを基に、居眠りや体調不良など異常がないか監視する技術をサプライヤ各社が提案している。
視線検知など複雑なアルゴリズムが必要なドライバー監視に対し、運転できる体勢かどうかをシンプルに判断するのがステアリング表面に静電容量センサーを配置する方法だ。ステアリングを握っているかどうかが、自動運転から復帰して運転する姿勢に戻っているかを推定する指標の1つになるといえる。「人とくるまのテクノロジー展2016」(2016年5月25〜27日、パシフィコ横浜)などで、こうした提案が見られた。
Valeo(ヴァレオ)の自動運転向けコックピットは、自動運転システムが何らかの理由で自動運転を継続できなくなってドライバーに運転の続きを任せる必要がある場合、クラスタディスプレイへの表示や音で警告しながら、ドライバーにステアリングを握るよう促す。
この時、一定時間にわたってドライバーが片手でもステアリングを持とうとしない場合は、ドライバー監視用のカメラでドライバーがわき見していないか、目を閉じている状態かどうかを確認し、運転できない状態の場合は「エマージェンシーパーキング」として路側帯に車両を停止させたり、減速したりする。
さらに、自動運転から手動運転にドライバーが任意で切り替える場合には、誤操作でバトンタッチしないよう、専用のスイッチを長押しさせる仕組みとしている。
ZF TRWも同様にセンサーを組み込んだステアリングを人とくるまのテクノロジー展2016で紹介した。同社は、ステアリングホイールの上端に小さな画面を搭載し、手を離すとステアリングを持つよう指示する。
Robert Bosch(ボッシュ)は指紋認証も活用する。ステアリングの親指がかかる位置で指紋を検出し、クルマの始動や自動運転と手動運転の切り替えを行う。また、指紋からドライバーを見分けて設定のパーソナライゼーションを行う。自動運転を開始する、もしくはドライバーが運転に復帰したい場合は指紋認証を行う部位に両手の親指を一定時間置けばよい。誤操作なく確実に運転モードを切り替えられるようにする。
ステアリングをセンサーとするのは、運転中に必ず取る姿勢からドライバーの状態検知が可能な点がメリットといえるだろう。もちろん、ステアリングを握っていれば必ず運転できる状態だとは限らない。ヴァレオのように複数の条件を一定時間満たすかどうかを基準とするなど、さまざまなドライバー監視技術と組み合わせて正確にドライバーの状態を識別していく必要がある。
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