もちろん、さらなる改良を加えた第3世代品の開発も進められている。富士通テン VICT技術本部 センサ技術部 主査の梶岡英樹氏は「現在、ミリ波レーダーに求められている要件は、より広角の検知だ。2018年ごろをめどに日米欧を含めて各地域のNCAP(自動車アセスメント)がより厳しい安全性能を求めるようになる。ミリ波レーダーもそれに合わせてレベルアップしなければならない。当社は2018年末をめどに第3世代品を開発中だ」と説明する。
また第3世代品でも、第2世代品と同様に薄型化/小型化を求められる可能性が高い。これについては、「一般的な考え方として、アンテナと高周波ユニットの損失を小さくすれば、ミリ波レーダーモジュールのさらなる小型化は可能だ」(梶岡氏)としている。
第2世代品ではSiGeデバイスを採用して高集積化を実現したが、さらなる高集積化が可能になるミリ波レーダーの送受信回路向けシリコンCMOSデバイスの開発も進んでいる。富士通テンと同じ富士通グループの富士通研究所も開発成果を発表している。
同氏は「最も安価な半導体製造プロセスであるシリコンCMOSを使うことによるコスト削減は、ADASの新興国への展開を考えると重要だ。また、消費電力を大幅に低減ができる分、ミリ波を多く出せるようになるので、検知距離や検知精度を高められるだろう」と期待を寄せる。
ただし、現在のシリコンCMOSデバイスは量産採用するというレベルにはまだ達していない。富士通テンの第3世代品にも採用されないもようだ。「2020年以降には、ADASは新車に全車装着になるだろう。シリコンCMOSデバイスはそのタイミングでは極めて重要な部品になるので、開発を進めてほしい」(同氏)という。
ここまで紹介した富士通テンの車載ミリ波レーダーは、車両前方の検知に用いられる77GHz帯の製品だ。同社はこの他に、前側方や後方を検知する77GHzの帯ミリ波レーダーも供給している。
こういった進行方向以外の車両周辺を検知するミリ波レーダーで間もなく登場するといわれているのが79GHz帯の製品だ。77GHz帯のミリ波レーダーは、帯域幅が±500MHzと狭いナローバンドであるのに対して、79GHz帯のミリ波レーダーは、帯域幅が±2GHzと広いワイドバンドだ。ワイドバンドになることで距離方向の分解能が向上する。例えば、77GHz帯の分解能が数十cm単位とすれば、79GHzは1桁cm単位になるという。
そして欧州では、現時点で車両周辺検知に用いられている24GHz帯を、この79GHz帯に切り替える方針が決まっている。日本国内でも総務省の認可により79GHz帯の利用が可能になっているのだ。
富士通テンも79GHz帯ミリ波レーダーの開発を進めている。「77GHz帯の電子スキャン方式がベースになる。開発のめどは2020年ごろを見込んでいるが、自動車メーカーの要求時期によるところが大きい」(鵜野氏)としている。
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