インダストリー4.0や工場向けIoTなどに注目が集まっていますが、そもそも工場内のネットワーク環境は、どのように構築すべきなのでしょうか。本連載では、産業用イーサネットの導入に当たり、その基礎から設備設計の留意点などを含めて解説していきます。第4回では、工場用イーサネットでも使うハブとスイッチの違いに焦点を当てながら、「基本的なネットワークの機能」を解説します。
第3回:「工場でも必要な、IPアドレスとネットワークデザインの考え方」
インダストリー4.0やIoT(Internet of Things)の実現には、まず、生産・製造の現場である工場の見える化を実現しなければなりません。ここで必要になるインフラは、以前からあったような一部のPLC(Programmable Logic Controller)やDCS(Distributed Control System)がつながっているという環境ではなく、全てのPLC、DCSがつながる環境です。これに伴って、工場から得るデータの量も増えていくことが予想されます。
皆さんの環境では、どのネットワーク機器が使われているか、また、用途に合った使い方がされているかを意識されたことはあるでしょうか。効率的で適切なネットワーク構築には、それぞれの機器がどのような機能を備え、どういった点に注意すべきなのかをきちんと理解することが大切です。
例えば、連載第1回で紹介したCASE STUDY(1)は、動作検証で構築した小規模ネットワークでは問題がなかったが、ネットワークの規模を拡大したらネットワークが止まってしまったという事例でした。これは、今回紹介する基本的なネットワークの機能を把握していれば避けることができます。
今回は、ネットワーク機器のうち、ハブとスイッチの違いに焦点を当てながら、基本的なネットワークの機能を解説していきます。
本連載の第2回にて紹介した通り、ネットワークの世界では「OSI参照モデル」を使って機能を説明します。このOSI参照モデルにおいて、ハブとスイッチではカバーできる範囲が異なります。
以下にて、各層(物理層、データリンク層、ネットワーク層)で提供される機能を紹介しながら、ハブとスイッチの違いを解説します。
まず「物理層」(Layer 1、略してL1)です。物理層ではその名前の通り、ケーブルの材質やコネクタの形状などの物理的な接続方法が定められています。エンドデバイスをつなぐ物理的な要素が一致すれば、電気信号をやりとりできます。
この物理層を代表する機器として、ネットワークを集約する「ハブ」と呼ばれる装置があります。ハブはPLCやDCSといったエンドデバイスからデータを受信すると、接続されている他の全デバイスにそのままデータを送信します。この動作は一般的に「ブロードキャスト」と呼ばれています。
ブロードキャストでは、つながっている全てのエンドデバイスに対してデータ通信が行われるため、最大でも実際の回線容量を端末数で割ったスピードでしか通信することができません。従って、大きなサイズのデータを送信するにはそれだけ多くの時間がかかります。
また、ブロードキャストではデータの宛先は指定されていないため、ハブにつながっているエンドデバイスが自分に関係があるデータかどうかを判断します。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.