ショーケースの右側に視線を移すと、エントランスから工場への動線の間に鎮座するゴージャズな置き時計が目に飛び込んできます。
これは、セイコークロックの最高級置時計「デコールセイコー悠久(ゆうきゅう)」です。トライアン相互は「精密板金メーカー」という立場から、部品加工を通じてこの「悠久」の開発と量産をサポートされているのです(関連リンク:「デコールセイコー 悠久について」 ※動いている様子を動画で見られます)。
精密さと美しさを兼ね備えた「悠久」は、外装デザインはセイコークロックのデザイナーが、機構設計はセイコーエプソンの熟練技士が、ともに3D CADシステムSolidWorksを駆使して練り上げたもの。トライアン相互も長年のSolidWorksユーザーです。
材料には耐久性の高い「SUS304 #800」の鏡面材を使用し、レーザー加工やワイヤーカットを駆使した金メッキ仕上げの部品で構成されていて、最高級置時計の称号にふさわしい仕上がりは突き抜けた存在感を放っています。
実はこの「悠久」の開発段階では、先述の通りデザイン側、設計側、加工側の3者が偶然にも同一の3D CADシステム(SolidWorks)を使用していました。そのため、頻繁なデータ交換を含めた“相互的な意思疎通”によって細部にわたる設計の詰めが円滑に行われ、加工工数の短縮、部品点数の大幅削減といったメリットをもたらしたのだそうです。そう聞くと、3D CADシステムが精密板金試作の世界でどのように活用されているのか知りたくなりますね。
それでは次に、データ作成室に入ってみましょう。
データ作成室ではNCベンダーに送り込むプログラムが作られています。ここでは「専門部隊」として3人のスタッフが常駐していて、月間平均700点のプログラム作成をこなしているとのことです。
プログラム作成に必要な入力情報は、「材料を突き当てるバックゲージの位置」と「上から材料を押してくるヤゲンの深さ」の2軸分の数値が主となります。ちなみにこちらのスタッフは現場での作業経験はないそうで、適用させるV(型)の選定では「曲げ幅 使用V表」という掲示物を使って情報共有を行っています。
プログラム作成上の疑問や不明な点が出た場合は、現場のそれぞれの担当スタッフとコミュニケーションを取って解決することもあるのだそう。「基本的にみんな仲良しなので(笑)」だそうです。これはスムースな連携に欠かせないことですね。だってにんげんだもの。
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