日本気象協会が、京都大学 防災研究所と共同で実施していたドローンによる高層気象観測技術の研究結果を発表した。上空1000mの高層観測にも有効性が認められ、将来的には火山ガスや大気汚染の観測にも利用できる可能性が示された。
日本気象協会は京都大学 防災研究所と共同で実施していた、ドローンによる高層気象観測技術の研究結果を発表した。現在、同協会では高層(およそ高度1000mまで)の気温や風向きをヘリウム気球を用いたGPSゾンデにて測定しているが、自律飛行可能であり再利用も可能なドローンによる可能性を調査するべく2014年より研究を行っていた。
京都大学防災研究所の宇治川オープンラボラトリーならび境界層風洞にて行われた実験では、「ドローンの耐風性能把握」「高層気象観測の実現可能性」「バルーン代替としてのドローンの可能性」「ドローンの姿勢データから風向き風速を推定する手法の開発」などについて実験が行われた。
耐風性能については最大風速15m/sまでの観測が可能であり、高度については最高で上空1000mまでドローンによる気象観測データが取得できる(弱風晴天時)ことが明らかにされた。バルーン代替としてのドローンの可能性については、ブレード回転によってGPS電波の受信に障害の発生する可能性が発見されたが、ブレード素材の変更が解消に有効であることが認められた。ホバリング時の姿勢データからその場の風向・風速を推定できる可能性があることが示されたとしている。
また、宇治川オープンラボラトリーに設置されている気象観測鉄塔との測定値比較も行われた。地上24/40/55mでの観測値比較については、気象観測鉄塔で得られる値とおおむね一致し、観測誤差の小さな事が確認された。
実験を通じて協会ではドローンを高層気象観測に利用する際の有効性や課題を明らかにできたとしており、観測機器の変更や追加により、これまで実施できなかった火山灰や大気汚染観測、サンプリングなどが可能になると見ており、気象計測のみならず環境分野調査への活用が期待できるとしている。
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