シーメンスでは、「デジタルエンタープライズ」の価値を実現するために、「つながる工場」実現のプラットフォームとして「TIA(Totally Integrated Automation)コンセプト」を以前から訴求しており今回も積極的な提案を行っているが、今回のハノーバーメッセではこのTIAコンセプトを実現に近づける具体的な提案が登場したことが特徴となっている。
象徴的なのが、シーメンス独自のクラウド情報基盤「MindSphere」である。同クラウド基盤は技術的なベースとしてはSAPのクラウド「SAP HANA cloud platform」が利用されているが、シーメンスの機器やサービスと組み合わせた産業用途での利用を想定しており、クラウド上でのアプリケーション操作などを可能とする。同クラウドプラットフォームはオープンなものとするとしており、通信プロトコルのベースはOPCを基軸とするとしている。また、データの置き場所については、ユーザーが自由に選択できるようにする他、アプリケーションなどもユーザーが自由に開発できるオープンアプリケーションフレームワークを採用している。
利用を想定する製造業ユーザーにとっては、各種製造装置や工場などの情報をMindSphere上に吸い上げ、遠隔監視を実現したり、これらの情報を解析して最適な作業へとフィードバックすることなどが可能だ。将来的にはユーザーは、MindSphere上で独自のWebサービスなどを開発できるようにし、マザー工場の知見をグローバルの他の工場で展開するというようなことが可能になるとしている。
さらに、インダストリー4.0など産業用IoTにおいては必須となるセキュリティについても、あらためて「Holistic Security Concept」を示し、産業用分野における生産プロセスでのセキュリティ対策をまとめた。工場など生産領域でのサイバーセキュリティは技術的な側面はもちろん、企業のIT担当者が担うのか、生産ラインの担当者が担うのかなど、運営上の問題も数多く抱えているのが現状だ。そのため、インダストリー4.0などで描く世界の最大の障壁として注目されている。
シーメンスではこれらを全体的に解決するために「プラントセキュリティ」や「ネットワークセキュリティ」「システム保全」の3つの層や、「プラントセキュリティ機能」「セキュリティプロセスの改善」「インシデントマネジメント」「セキュリティ意識」「ITインフラ」の5つの手段での対応など、取り得る対策を整理した。
同社ではこの他、買収したCD-adapcoとの機能融合や、TIAポータルの新バージョンの紹介などを行い、インダストリー4.0およびデジタルエンタープライズで描くコンセプトを着実に実現する要素をそろえてきたことをアピールしていた。
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