次世代「アイサイト」は人工知能「Watson」を活用へ、富士重工業とIBMが協業 : 自動運転技術
富士重工業と日本IBMは、高度運転支援システム分野における実験映像データの解析システムの構築と、クラウドおよび人工知能技術に関する協業検討について合意した。
「アイサイト」の認識イメージ。現行最新のバージョン3を搭載する「WRX S4」の場合(クリックで拡大) 出典:富士重工業
富士重工業と日本IBMは2016年4月25日、高度運転支援システム分野における実験映像データの解析システムの構築と、クラウドおよび人工知能技術に関する協業検討について合意したと発表した。
両社は、富士重工業のステレオカメラを用いる運転支援システム「EyeSight(アイサイト)」などの膨大な実験映像データを集約して統合的に管理するシステムを構築し、2016年4月から運用を開始している。これにより、開発者が必要とするシーンの実験映像データの検索や解析が容易となり、高度な運転支援の実現に向け、大幅な開発効率の向上につながる見込みだとしている。
さらに今後は、IBMのクラウドを基盤とした自動車業界向けのIoT(モノのインターネット)ソリューション「IBM Watson IoT for Automotive」の活用も検討していく。新たなシステムの構築や、高度運転支援の実現に向けたクラウド/人工知能分野における最新技術の特性の把握、高度運転支援システムにおける技術適用の可能性などについて検証を進めていくという。
富士重工業は「『自動車事故をゼロにすること』を目指し、アイサイトで実証された安全性能と信頼性をさらに進化させ、スバルらしい自動運転の実現に向けた技術開発を進めている。今回の日本IBMとの協業は、その開発を加速させ、技術レベルを飛躍的に進化させるためのベースとなるものだ。今後もクルマをたのしむための安全技術として運転支援システムを磨き続けていき、安心でたのしいドライビングのための運転支援システムを実現していく」と述べている。
なお富士重工業は、アイサイトの新機能として、2017年に「高速道路渋滞時自動運転」を、2020年に「高速道路自動運転」を追加する方針を打ち出している。今回の日本IBMとの協業は、これらの新機能開発を加速させるためのものだ。
「アイサイト」の進化の方向性(クリックで拡大) 出典:富士重工業
一方、日本IBMは、ホンダのF1レースカー開発におけるIoT for Automotiveの採用を決めるなど、自動車業界への提案を強化している。
「アイサイト」がさらなる機能強化、2017年に高速道路渋滞時の自動運転を実現
富士重工業は、2014年度(2015年3月期)の決算説明会において、同社の運転支援システム「EyeSight(アイサイト)」の進化の方向性を示した。2017年に高速道路の同一車線上における渋滞追従機能を実現し、2020年には車線変更を含めた高速道路における自動運転技術を導入する計画である。
ホンダのF1パワーユニットが「IoT」に、IBMが協力
日本IBMは、同社の自動車業界向けソリューション「IoT for Automotive」が、ホンダのF1レースカー向けパワーユニットのレーシングデータ解析システム基盤に採用されていることを明らかにした。
「ぶつからない」と言い切ったアイサイトが日本の運転支援システムを変えた
2009年まで、日本では衝突する前に完全に停止する自動ブレーキが法規制で認められていなかったが、今や部分的ながら自動運転システムも利用されるようになった。自動運転の前段にある運転支援システムを、前後編に分けて紹介する。前編は、クルマがぶつからないための技術だ。
スバル「アイサイト」でも交通事故はゼロにはならない、しかし6割は減らせる
「ぶつからないクルマ?」をキャッチコピーに拡販を続けてきた、富士重工業のステレオカメラを用いた運転支援システム「EyeSight(アイサイト)」。2010年5月から10万円で販売を始めた2代目の「EyeSight(ver.2)」の搭載車は、非搭載車よりも人身事故発生件数が約6割少ないことが分かった。
開発中止の危機を乗り越えヒット商品に、「EyeSight」成功の原動力とは
富士重工業のステレオカメラを用いた運転支援システム「EyeSight」の販売が好調だ。同社の主力車種「レガシィ」では、新車販売時の装着率が90%にも達するという。ヒット商品に成長したEyeSightだが、今ある成功の陰には開発陣の20年以上にわたる苦闘があった。基礎研究の段階から開発に携わってきた樋渡穣氏に、EyeSight開発の道のりについて聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.