工場内でIoTなどを活用し最適な生産を実現する「スマートファクトリー」への関心が高まっている。その基盤としてあらためて導入が広がっているのが産業用PCだ。従来は専用機器を活用することが多かった工場内だが、ネットワークや異システム間連携が必須となる中、産業用PCの「オープン性」があらためて注目を集めている。
ドイツの「インダストリー4.0」など、世界的にIoT(Internet of Things、モノのインターネット)を産業領域で活用しようという動きが加速している。日本でもロボット革命イニシアティブ協議会やIoT推進コンソーシアムなど政府主導の団体活動などが進んでいる他、日本機械学会 生産システム部門での活動が母体となった「Industrial Value Chain Initiative(IVI)」などさまざまな活動が進んでいる。
特に製造現場でのIoT活用は、現場力に強みを持つ日本の製造業にとって大きな関心事だ。インダストリー4.0などが目指す世界は、自律的に最適な生産が行えるスマートファクトリーの実現である。IoTとデータ分析・各種ラーニング技術などを活用することで、従来は難しかったマスカスタマイゼーション(カスタム製品を大量生産と同じ効率で生産すること)を自律的に行える工場の実現を目指している。
これらの実現のために大きなカギを握るのが、まず工場のシステム間の情報連携・システム連携を実現することだ。現在の製造現場は、各種製造装置にひもづいた、それぞれが独立した異なるシステムで構成されている。これらの情報やシステムをどう取りまとめ、連携させ、「つながる工場」を実現するのか、ということが大きな課題になっているといえる。インダストリー4.0をはじめとするさまざまな団体活動では、参加各企業の利害などを踏まえた上でどのような形でこうした個別のシステムをつないでいくか、そのためにどういう標準や技術が必要かということを話し合っているという状況だ。
工場内の各種システムを「つなぐ」ということを考えた場合、重要になるのは「オープン性」と「ネットワーク対応」である。これらを全て一から開発するのは、機器メーカーや工場インテグレーターなどにとっても大きな負担となる。そこで製造現場のIoT活用と合わせて注目度があらためて高まっているのが産業用PCである。
産業用PCとは、産業業務用途に特化した性能を持つPC製品である。通常のPCと同様にさまざまなソフトウェアアプリケーションを利用することが可能だが、機器の特徴としては一般向け機器と異なり、「信頼性」「耐環境性」「長期供給」の3つのポイントがある。産業用機器は最低でも5年、長い場合は20年以上使う可能性があり、B2Bでユーザーが同機器を使ってビジネスを行うため、これらのポイントが重要になるというわけだ。
これらの産業用PCを活用することで、「つながる工場」に必要な機器間の連携を実現する基盤を構築することが可能となる他、ソフトウェアによる機能の追加や削減などが容易になり、生産ラインの柔軟性を実現できるようになる。こうした背景から注目度が高まってきている。
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