こうした中で、新たに産業用PCに参入するような動きも出てきている。オムロンでは、2015年12月に開催されたオートメーション技術の展示会「システムコントロールフェア(SCF)2015」において、以前から展開していたPLC(プログラマブルロジックコントローラー)に加え、産業用PCを投入する方針も明らかにした※)。
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同社ではPLCの高度化に以前から取り組んできた。高度なCPUなどを搭載しオープンスタンダードを効果的に活用した高機能PLC「Sysmac NJシリーズ」などを展開し、ある意味で産業用PCに近いPLCの展開を進めてきた。しかし性能差があまりなくなる中で「ラインアップとして、あらためて制御と一般の事務作業とを併用できるIPCへのニーズが高まってきた。産業用PCもコントローラーもそれぞれラインアップとしてそろえていく。それぞれの利点があり、製造現場に合った機器を提案していく」(オムロン)という。新たに投入する産業用PCは「Sysmac IPC」とし、投入時期は未定だが「2016年前半になるだろう」(同)としている。
既にPLCについても、「ソフトウェアPLC」や「モーションコントロールソフトウェア」などのアプリケーションソフトも増えつつある。リアルタイム制御を可能とする各種ミドルウェアと共に使用することで、産業用PCでありながら、PLCやモーションコントローラの機能を実行することが可能である。
製造現場の制御そのものであれば専用機器であるPLCの方が、処理速度やプログラム開発などの運用面、コスト面でも優位性を持っている。しかし、産業用PCの特徴は複数台のPLCの機能を1台に収納することが可能である他、制御を実行するプログラムの変更や複製などが可能であるプラットフォームとしての特徴である。製造現場のIoT活用を行う上で、さまざまな情報連携ツールなどが必要となり、その連携部分をどう作るかなどの点も現実的な問題としてある。産業用PCを柔軟性あるプラットフォームとして活用することで、こうした動きに対応しようという動きが広がりを見せているのだ。
製造現場を取り巻く環境は、急速に変化している。IoT活用の世界的な動きが高まる中、かつてのようなクローズドなものから、標準かつオープンな環境へと移行が進む。インダストリー4.0などのような製造現場全体を最適化するための仕組み作りが求められる中、注目度を高めているのが「産業用PC」である。特集ページでは「産業用PC」に焦点を当て、最新動向、製品ニュースなどをお届けする。
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