トヨタ自動車 常務役員の奥地弘章氏が車載ソフトウェアのセミナーの基調講演に登壇。同社の運転支援システムや自動運転に関する取り組みについて説明した。奥地氏は「レベル4の完全自動運転車は、ドライバーによる運転と自動運転機能が混在するレベル3の自動運転車を自己学習によって賢く育てることで実現できる」と語った。
トヨタ自動車 技術開発本部 副本部長で常務役員の奥地弘章氏が、2016年3月10〜11日に東京都内で開催された車載ソフトウェアのセミナー「オートモーティブ・ソフトウェア・フロンティア2016」の1日目の基調講演に登壇。「運転支援・自動運転の技術動向」と題して、同社の運転支援システムや自動運転技術に関する取り組みについて説明した。
まず奥地氏は、トヨタ自動車が「統合安全コンセプト」に基づいて開発し、2015年から導入を始めた運転支援システム「Toyota Safety Sense」や、車車間・路車間通信システム「ITS Connect」について紹介。続いて、2015年10月に打ち出した自動運転技術に対する同社の考え方「Mobility Teammate Concept」について説明した。
奥地氏はMobility Teammate Conceptについて、「『トヨタは自動運転に熱心ではない』とよくいわれるが、実際にはさまざまな取り組みを行っている。これらの取り組みをどのようにすれば正しく伝わるかを考え、まとめたものだ」と説明する。Mobility Teammate Conceptでは、ドライバーのFun to Driveを妨げない、運転したくないときは安心してクルマに任せられる、といった人とクルマの協調を主眼に置いている。そして、「自動運転車の課題として事故時の法的責任の所在が語られることが多いが、そもそも事故を起こすようなクルマを市場にだすべきではない」(同氏)という方向性を示した。
トヨタ自動車は、2020年ごろの実用化を目指して自動車専用道自動運転システムを開発中である。奥地氏は、実験車両の「Highway Teammate」のセンサー構成や自社位置推定技術について解説した。レクサスGSをベースにしたHighway Teammateは、ステレオカメラやミリ波レーダー、ライダー(LIDAR)などのセンサーにより全周囲検知が可能で「早期市販化を目指した量産化可能な構成」(同氏)だ。
また自車位置推定技術では、従来の車線維持機能で用いていた白線検知だけでなく、ランドマーク検知も加えて、高精度地図と照合する手法を採用している。奥地氏は「GPSとジャイロを組み合わせた技術では、最も悪い状態での精度が10mにもなってしまう。これでは安全な自動運転ができるとは言いがたい。そこで、ランドマーク検知と高精度地図による空間情報も組み合わせたところ、精度は横方向で0.1m、縦方向で0.5mまで向上できた」という成果を挙げた。
自動車専用道における自動運転システムについては、分合流における認知判断や落下物などの突発事象への対応など幾つか課題はあるものの、実現の道筋は見えつつある。
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