まず身体を埋めたときの、シートのホールド感に感激します。私は先日、新型プリウスで東京都内〜福島県の往復を運転しましたが、総走行距離約430kmの中で、持病の腰痛が発生しませんでした。私の腰は爆弾であり、高感度なセンサー。
ちょっとでも柔らかすぎたり、また体圧が1カ所に掛かり過ぎたりしてしまうような設計のシートだと、一発でギックリっぽくなってしまうスグレモノ(涙)。そのセンサーがピクっとも反応しなかった。つまりは慢性的なひどい腰痛持ちの腰をもしっかり支えてくれたのです。
フロントシートは新設計で、快適な骨盤の角度やクッションパッドの素材/厚みを工夫し、坐骨に集中しがちな圧力を分散させつつも横方向のGに耐えるフィット感を実現しています。シートポジションの調整もきめ細やか。最上級グレードのAプレミアムになると、運転席では8方向に助手席も4方向と、かなりの微調整ができるようになりました。しかも電動のランバーサポート付き。
実は、プリウスの開発を担当されたトヨタ自動車 製品企画本部 チーフエンジニアの豊島浩二氏は、尾骨を骨折した過去を持ってらっしゃるのだとか。「変なシートに座ったら、お尻がかゆくなるんです。そうならないようにしっかり設計しました」(豊島氏)ということですから、なるほど、本人の古傷がそれこそセンサーになって、良いシートが誕生したというわけなんですね。納得。
さあ、走ってみましょう。ハイブリッドならではのスッキリとした時速0kmからの加速はもちろんのこと、エンジン走行に入ったときの滑らかなことと言ったら! なにより、そのトルクが膨らんでいく、つまりスピードに乗っかっていくときの加速感と、ペダルを踏んでいく踏力感覚が見事にマッチして、なんともキモチイイ!
この「スーっと加速していってキモチイイ」という実に明快な感覚を純粋に楽しめることこそが、新型プリウス最大の功績だと私は感じています。スーッと滑らかに加速する、という「ごく普通の」挙動には、ため息が出るほど多くのテクノロジーが割かれているからです。
まず、プリウスといえば「ハイブリッド」ですが、プリウスのハイブリッドとはモーターとガソリンエンジンを組み合わせたパワートレインを指します。「そんなん分かっとるわ!」と言うなかれ。その2つともが優れていなければ、JC08モード燃費40.8km/l(リットル)なんてバケモノみたいな数値を出すことは不可能なのだということをもう一回思い出してください。
その肝心のハイブリッドシステムこそが、小型化と軽量化、そして高効率化を果たしています。ハイブリッドトランスアクスルは、従来型が幅409mmだったのに対し、新型は幅362mmとコンパクト化しています。モーターの複軸配置やプラネタリーギアを廃し、リダクションギアの平行軸歯車化をしたことで実現。これにより、約20%の損失低減をかなえました。
高回転モーターも新巻線方式を採用して小型・軽量化され、こちらも20%の損失低減をしています。さらに、パワーコントロールユニット(PCU)も小型化に成功。使用体積が先代は12.6l(リットル)だったものを、新型は8.2lとしたことで、先代までは荷室下部に収納されていたこのPCUを、前出のトランスアクスルの真上に置くことが可能になりました。つまり荷室が広くなったということと同義です。駆動用バッテリーも高性能化と小型化をかなえています。これはリアシート下に収納できるようになり、室内空間の確保にも貢献しました。
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