日本型モノづくりの象徴ともいうべき「トヨタ生産方式」。本連載では多くの製造業が取り入れるトヨタ生産方式の利点を生かしつつ、IoTを活用してモノづくりを強化するポイントについて解説していきます。第4回となる今回は、原価管理におけるIoTの活用ポイントについて紹介します。
原価管理は製造業の経営者が最も強化したい管理業務だとよくお聞きします。ですが、現場管理者は原価管理が重要だと感じてはいるものの、日々の生産要求に応えるのが精いっぱいで、具体的に何を捉えてどう現場を改善すれば良いか、いまひとつ理解できていないというのが実態なのではないでしょうか。
本連載「トヨタ生産方式で考えるIoT活用」の第4回では、トヨタ生産方式を導入している企業(製造業)を例に、原価管理強化におけるIoT(Internet of Things、モノのインターネット)活用に向けた考え方について説明していきます。
製造業の経営者とお話をしていると「今月当社はどれだけもうかったのか、何で採算が取れ、何で取れていないのかよく分からない」といった言葉が出てきます。もう少し詳しく聞くと、例えば自動車業界ではハイブリッド車やSUVといった車種ごとに売れ行きが異なります。年度計画を立案した際にこうした車種ごとの販売予測も行いますが、実際の売れ行きは景気動向などの影響を受けるものです。
さらに各車種には複数のグレード(ハイ、ノーマル、ロー)を設けるのが一般的です。これらを含めると数多くの種類の自動車が、それぞれ異なる売れ方をしていくことになります。
「利益=売上−原価」となりますが、原価には車種別に把握できるコストとできないコストがあります。例えば材料は車種別に把握できるが、設備や人で加工したコストを車種別に把握するのは難しいでしょう。
つまり多品種商品の原価はそもそも個別に捉えることが難しく、さらに個々の売れ行きは景気に左右されるため、経営層はタイムリーに「現在の自社の利益の源泉は何か」を正確に把握するのに四苦八苦しているという現状があるのではないでしょうか。
トヨタ生産方式を採用している製造業では、最終工程の組立工程は混流生産による1個流しを前提としています。ここでは複数の車種を1台ずつ流すことで、多品種の品そろえを均等にして、JIT(ジャストインタイム)を実現します。
そこから前工程にたどっていくと、溶接工程やプレス工程といった設備中心で生産する工程になります。ここでは複数の車種に使用する部品を生産するのですが、本連載の第2回で解説したように、基本的にはかんばん生産でロット形成する手法を採用しています。ここでは複数の車種に使用する共通部品を生産する割合が多くなります。
設備で生産したモノの原価を求めるには、設備や金型への投資金額から耐用年数に応じて減価償却を行います。生産設備の減価償却費は一般的に定率法を採用しますので、設備投資した時点と何年か使用した後で比べると、最初の1カ月における費用の方が大きくなります。これは法律で決められていることなので、財務諸表上はこの計算結果で採算を表記しますが、本来のもうけを捉えたい場合、適切な計算方法とはいえません。
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