2015年のIoT投資額の産業分野別ランキングを見てみると1位は「組み立て製造業」で2位が「プロセス製造業」と製造業がトップ2を独占した。3位は、電力システム改革などによりスマート化が進む「公共/公益」、4位は「官公庁」となった。また5位には、スマートシティなど産業分野をまたがる新たな領域の製品群を示す「クロスインダストリー」が入っている。
一方で、2014〜2020年の投資額のCAGRランキングを見ると「個人消費者」が1位。次いで「クロスインダストリー」「運輸/運輸サービス」「資源」「医療」となっており、現在それほど浸透していない産業分野での普及が広がると予測している。
ユースケースとしてのランキングは、2015年の年間投資額では、1位が「製造オペレーション」、2位が「製造アセット管理」となっており、こちらも製造業が1位、2位を独占している状況だ。既に製造装置などでデータ取得が行われていたことなどに加え、ドイツのインダストリー4.0などいち早くトレンドの波が来ていることから、取り組みが加速している様子が伺える。3位には、クロスインダストリー分野に位置付ける「コネクテッドビルディング」が、4位には「輸送貨物管理」が入った。また5位にもクロスインダストリー分野の「コネクテッドカー」がランクインしている。
一方、2014〜2020年の投資額のCAGRランキングは、1位が「スマートグリッド」となった。これは「スマートメーターの設置が2020年までに進むことから、安定的に投資が増えることが予測されているためだ」とIDC Japan コミュニケーションズ マーケットアナリストの鳥巣悠太氏は述べている。また2位には「テレマティクス保険」、3位には「スマートアプライアンス」、4位は「院内クリニカルケア」、5位は「ホームセキュリティ監視」が続くと予測する。
ユースケースとしてのCAGRで「スマートグリッド」が高い成長率を示しているのに対し、産業別の成長率でスマートグリッドを含む「公共/公益」の成長率が高くないことについては「現在使われているような技術がスマートグリッドに置き換わっていくことが想定されるため、スマートグリッド以外の成長率が低く、相殺するような形になっているためだ」と鳥巣氏は述べている。
IoTについては、従来のICT導入と異なり企業が抱える「情報システム部門」などICTを専門にした部門が導入の決定権を持たず、事業主体が持つケースが多いことが指摘されている。実際に今回のIDC Japanの調査でも「IoTの導入/運用に関し、直接関わる事業者は誰ですか」の問いに対し、14%が「非IT事業者」と答えている。「実際にGEやコマツなど、ITに関係のない事業者がIoTサービスプロバイダーとして新たなサービスを始めるケースが増えている」と鳥巣氏は述べる。
これらを踏まえ、鳥巣氏は提言として「IoTクラウドやIoTアナリティクスはあくまでIoTを実現するツールであり、重要なのはビジネスを具現化するアイデア力と継続力だ」と強調。「IoTを活用してどういうビジネスを展開するかが勝負のポイントだ」(同)と述べている。
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