製造業が提供すべき商品は単に「技術力の高いもの」「信頼性の高いもの」から「マーケットが求める価値を提供するもの」「売れるもの」へと変化しつつある。中間まとめでは「IoTを活用し、商品の運用情報や消費者の嗜好や行動を把握し、そこから導かれるニーズに的確・迅速に応えていくことができるようになる」と述べる。
また同時に、多品種少量生産を進める上で、それに対応できる柔軟な生産ライン・システムが必要になると指摘する。例えば、生産機械の機能をモジュール化し、それらの並び替えを可能とする「プラグ&プレイ」など、柔軟なプラットフォームの構築も行われ始めている。多品種少量生産の流れが製品、業種に依存しつつもどの程度まで進行するかを見極めつつ、製造業および産業界全体における対応が必要となる。
IoT活用による「社外」に向けた改革として特徴的なのがサービス化である。IoTは製造業のサービス化を加速化し、モノづくりの意味は「モノを作る」ことから「付加価値を作る」ことへと変化する。ユーザーによる商品の運用状況をセンサーなどによって把握することが可能となり、その運用ソリューションを顧客に価値として提供することが容易になる(関連記事)。
具体的には、製品の稼働状況に基づく予知保全、最適な製品運用方法の提案などのアフターサービスや、製品の利用状況に応じた課金するビジネスなど、新たなモノの売り方やビジネスモデルが生まれる。
オープンイノベーションの進展によって、異業種のテクノロジーを利用した連携や異業種からの新たな競合企業の参入が進む。こうしたトレンドは、日系製造業が産業の垣根を越え、新たな事業領域へと参入する大きなチャンスとなる。
これまでの常識をはるかに越えた事業領域や競合相手が生まれる中で「既存の発想にとどまらず、IoTの活用などを通じ、柔軟に発想し、事業分野や連携企業を広げることが重要である」(中間まとめ)としている。一方で「企業は異業種参入に対しても事業の継続性を確保していくことも重要だ」(中間まとめ)とも指摘している。
これらの「2030年のあるべき姿」を定める一方で、実際の企業が抱える課題についてIoTによる製造ビジネス変革WGでは、2015年8月と10月にアンケートを実施。中間まとめでは「実際に企業が考えている課題」について「オープンイノベーションの実現」「標準化・セキュリティへの対応」「中小企業やIoT対応のハードルが高い企業への支援」「経営層の意識改革と企業行動の変革」「人材育成・少子高齢化対応」「日本の強み活用」という6つのポイントをまとめた。
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