モデル図に「適当な個数の要素」を描き込み、「適当な本数のリンク」でそれらを結び、「適当な大きさ」でモデル図を描きあげることが成功への道です。そこでモデル図における計測基準(メトリクス)を紹介し、その値の頃合いの相場観を見ていくことにしましょう。モデル図には各種のメトリクスがあり、このメトリクスとその頃合の相場観を以下で紹介します。
まずは1つのモデル図に,どれだけの要素を描き込むかというメトリクスです。例えば、クラス図のときは、クラス図に描くクラス数が要素数のメトリクスになります。
このメトリクス値の頃合いの値はモデル図の種類やプロジェクト、プロダクトなどによっても異なりますが、16個以上あるとどのモデル図でも多すぎ、4個未満だと少ないでしょう。人間が一目で理解できるのは7個ぐらいが適当であるといわれています(これは魔法の数字 7 = 「マジックナンバー7」と呼ばれている都市伝説の数です)が、もう少し多くても大丈夫です。
図4ではモデル図における要素数で、少なすぎる場合と多すぎる場合、適当な個数のときの様子を示しました。つまり2個では少なすぎる、18個では多すぎる、7個では適当だということです。
そこでこの記事では要素数の相場観は、「4個以上16個以下」としたいと思います。もちろん、このメトリクス値の閾値はモデル図の各目的、各プロジェクト、各プロダクト、各モデルの種類で決めていくことになります。
このリンク数についてもモデル図の要素数と同様、リンク本数によるメトリクスを考えます。リンク数は8本以上あると、そのモデル図は複雑すぎるでしょう。さらに言えばリンク数が4本以上でも多すぎるかどうかを検討する必要があるでしょう。そうなのです。リンク数ではマジックナンバー「7」では多すぎて、魔法の効果はないでしょう。
このメトリクスの閾値はもちろんマジックナンバー7を入れた「7本以下」に設定しても大丈夫ですので、各自が決めてください。この記事ではリンク数の相場観としては「4本以下」とやや厳し目にしたいと思います。つまりマジックナンバーの7本は多すぎます。
モデル図の各要素に対しても、個々にメトリクスがあります。クラス図のときは1個のクラスについてその属性数や操作数などに関してメトリクスがありますし、E-R 図でも状態遷移図でもフローチャートでも同様に、個々のエンティティ、状態、機能/条件などにメトリクスがあります。
クラス図の中のクラスのメトリクスを考えてみます。クラス図の操作数(つまり主要なメソッド関数の個数)は、セッタやゲッタ関数などを除くと、8個以下がいいでしょう。クラスの行数はもちろん50行を超えてはいけませんし、平均行数では20行以下(セッタやゲッタ関数を入れた場合、平均は10行以下)にした方がいいでしょう。状態遷移図における状態数や遷移数にも頃合いの相場観があります。
これらのモデル図のメトリクスを意識して、「どれくらいのメトリクスが良いのか、悪いの」の相場観を磨いていくことが成功への道になります。このためにはモデル図でのメトリクス計測が必要であり、これがモデル図(表面的ですが)評価の1つになります。計測することで評価が行え、それがエクセレントなモデリングへの第一歩となります。
次はモデリングを成功させるための重要なコツである「抽象化と具象化のバランス」を見ていきます。
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