品質保証の体制をIoTでカイゼンするトヨタ生産方式で考えるIoT活用(3)(2/4 ページ)

» 2016年01月28日 07時00分 公開

2.新製品の生産ライン立ち上げ時の課題

 品質は製品設計、工程設計を経て、それぞれの製品・部品に対する品質特性(強度、寸法etc.)と、どの工程でその特性を確保するのかで作り込みます。例えばベアリングを例にすると、鍛造工程では形状規格を確保し、その品質特性を確保するために外観検査で寸法を計測するといった流れで決めていきます。

 こうした結果をQC工程表という書式で製造現場に移管をして、具体的な作業を作業要領書としてまとめて現場作業者に渡します。同じくベアリングの例で説明すると、この作業要領所には外観検査のやり方などを、写真とともに管理のポイントや作業手順を具体的に記述することで、誰でも実施できるよう工夫します。

 しかし開発リードタイムが短くなり、品質特性の基準を十分にクリアできない状態で量産工程に入るケースもあります。そうなると生技部門、品質保証部門、製造部門が量産工程で生産量が著しく増加する中で、品質基準を確保する製造方法の改善を行います。このため新製品の立ち上り時期は不適合品の手直しや、廃却によるロスへの対応でバタバタします。この急場をしのぐためには他部門からの応援で乗り切るケースもあります。

3.品質の継続保証における課題

 品質が安定し、継続生産に入った中でも課題は発生します。素材加工の工程となると複数の素材を配合して加工することになります。季節変動により素材の配合条件や温度、湿度の状況で良品を確保する製造条件が微妙に変動します。品質基準を確保するための製造条件は一律で設定しているが、不具合が発生すると現場では熟練工がカンコツを働かせて製造条件を微妙に調整しております。ここで言いたいのは品質基準をクリアするための製造条件は変動するということと、熟練工の豊富な経験により品質が確保されているということです。

4.クレーム発生時の対処における課題

 納品後にクレームが発生すると品質保証部が要因解析と影響範囲の調査を行います。

まずは同じ製造条件で製造したロット(※)を、「製品⇒半製品⇒部品⇒原材料」の順で、後工程から前工程にわたって調査をします。この際のエビデンスとなる製造記録、検査記録が紙になっていることが多いため、要因解析と影響調査は品質保証部門だけで実施できず、設計部門、生産管理部門、製造部門、調達部門を巻き込んで実施することになります。

 従って要因解析に時間がかかることと、製品を回収する必要性が出た際の影響範囲の箇所(一般的にはトレース帯といいます)の特定が難しく、トレース帯の疑わしい範囲内の製品は全て回収することになってしまい、大きな損失につながります。

(※)同一ロットを5M1Eで判断(5M=Man:作業者、Method:作業方法、Machine:設備、Material:材料、Measurement:測定、1E=Environment:環境)

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