2017年のCES、主役は自動運転に替わって人工知能になる?CES 2016レポート(3/4 ページ)

» 2016年01月26日 11時00分 公開

自動運転に本腰を入れるトヨタ

 BMWが技術的に既に実現できている自動運転技術を紹介したのに対し、トヨタ自動車は実車ではなく、今後のクルマの「頭脳化」に対する取り組みについて紹介していた。

 今回のCESにおけるトヨタ自動車のプレスカンファレンスでは、クルマ向け人工知能(AI)の研究開発を行う「Toyota Research Institute(TRI)」の詳細を紹介した。

 TRIは「衝突事故を起こさないクルマ」を作ることを最大の目的に掲げており、そのために米国防高等研究計画局(DARPA)でプログラムマネジャーを務めたGill Pratt(ギル・プラット)氏をCEOに登用した他、グーグルの元ロボティクス部門長であるJames Kuffner(ジェームス・カフナー)氏を抜てきするなど、そうそうたる顔ぶれで固められている。さらにマサチューセッツ工科大学(MIT)やスタンフォード大学とも人工知能に関する共同研究を行っていくとしている。プレスカンファレンス終了後は、ラウンドテーブルと称して、TRIの役員に就任したメンバーが登壇し、ディスカッションを行っていた。

トヨタ自動車はプレスカンファンレンスでTRIについて説明 トヨタ自動車はプレスカンファンレンスでTRIについて説明(クリックで拡大)

 自動運転車の研究テーマというと、いかに安全かつ確実にクルマを走行させるかということが焦点だが、TRIの研究テーマはさらにもう一歩踏み込んだ内容といえる。例えば、自動運転モードで高速道路を走行している際に、2台前のトラックから積み荷が落ち、前を走行するクルマが予期せぬ動きをした時に、その自動運転車はどのように反応するのが正解なのか、それをクルマに搭載された人工知能に教えるというものである。

 同様の状況の際に人間の取るとっさの判断や反射的行動は全ての人に共通しているわけでもなければ、そのとっさの行動が常に正しいとも限らない。例えば急ブレーキをかけたとすると、落ちた積み荷や前のクルマとの接触は避けられるかもしれないが、後続のクルマに追突される危険性もある。そして、全く同じ環境(同じ積み荷、他の車との同じ位置関係、同じ路面状況など)に2度以上遭遇する確率はかなり低い。このような場合、人工知能がそれぞれの状況に応じて正しい判断を行うことができるのか、ということが数ある研究テーマの中でも最優先となっている。

 トヨタ自動車がこれまで販売したクルマから得られる走行データは、年間で1兆kmに上るそうだ。これらのクルマから得られたデータを収集/解析していくことで、自動運転に生かしていくとともに、将来的にはロボットなど他のモノづくりにも活用していくことを目指している。

 トヨタ自動車の展示ブースでは、クルマの展示以外に、同社とNTTや東京大学の出身者が立ち上げたベンチャー・Preferred Networksが共同で行っている、ディープラーニングを活用した衝突回避のデモを、模型のクルマを自走させて行っていた。

ディープラーニングを活用した衝突回避のデモ ディープラーニングを活用した衝突回避のデモ(クリックで拡大)

 デモの内容は、これまで無秩序に走って互いに衝突を繰り返していた模型のクルマが、1時間、2時間と時間を追うごとに秩序を持って走るようになり、4時間後には一切の衝突を起こすことなく走行するという、人工知能が学習する経緯と成果を表したものだ。衝突回避に関する学習自体は端末(クルマ)が実施する。これには、クラウドを経由することにより生じる遅延を防ぎ、端末側でリアルタイムに情報処理を行う「エッジコンピューティング」の技術が活用されている。

 この他にも、トヨタ自動車はCESに先立ち、クルマに搭載されているGPSやカメラを活用して高精度な地図データを自動生成する「地図自動生成システム」を発表している。自動運転実現に向けて本腰を入れ始めたトヨタの動きからは今後も目が離せない。

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