さて、ARM v8-Mの説明が終わったところで、次はいよいよmbed OS 3.0である。以前紹介した際には2015年10月15日にv3.0がリリースという予定だったが、やはり若干の遅れがあるようで、現状ではTechnical Previewというβ版状態ではある(関連記事:ARM「mbed OS」とは何か?その詳細と動向)。
ただそれでも既に提供は開始されている。入手はこちらから可能で、現状はOS 15.11が最新のものだ。この15.11ではターゲットボードとして「NXP JN5179」「STMicro Nucleo F401/DISCO-F4291」「Nordic Semiconductor nRF51 DK/nRF51822-mKIT」「BBC micro:bit」「Silicon Labs EFM32 Giant Gecko/EFM32 Happy Gecko」が挙げられてい、これ以外の製品も展示会場ではmbed OS 3.0を動かしての動作デモを行っており、それぞれのメーカーから必要なドライバ類が提供されると思われる。
さて、そのmbed OS 3.0の最終的な構成がこちらだ(Photo28)。以前のこのスライドと比較していただくと、大きく異なる点として「セキュリティ向けのμVisorが搭載された」「mbed TLSが標準搭載された」の2点が挙げられる。
このmbed OS μVisorは別にARM v8-MのTrustZoneモードに対応というワケではなく、既存のCortex-MベースのMCUで利用できる様にするためのものである。逆に言えば、TrustZoneモードがハイパーバイザーなしで利用できるといっても、実際にインプリメントを行う場合は何らかのハイパーバイザーを利用するのが現実的、ということなのかもしれない。
これにあわせて同時に発表されたのが「mbed Device Connector」(Photo29)である。これは何か?という話を最初にしておく。以前の図では、mbed Deviceはまずmbed Device Serverに接続し、ここからCloud Serviceに接続する形態をとっていた。これはこれでいいのだが、ということはmbed Deviceを使う場合は必ずmbed Device Serverを立てないといけないことになる。この手間を省くのがmbed Device Connectorで、mbed Deviceをこのサービスにつなぐ事でそのまま(Device Server無しで)Cloud Serviceを使えるようにするというものだ。
このDevice Connectorは基本的には接続サービスを提供するだけで、Device Serverの完全な代替になるわけではない事に注意して欲しい。ちなみにこのサービスはこちら( https://connector.mbed.com/ )で利用可能だが、開発者向けには最大100デバイス、毎時り1万リクエストまでは無料で利用可能(それ以上、あるいは商用利用に関しては別途課金が発生)となっている。また2016年には、このmbed Device Connector経由でアプリケーションの配布も可能になることも明らかにされた(Photo30)。
基調講演の最後は、「何をもって評価するか」(Photo31)の変遷を示し、IoTの時代はセキュリティ要素を加味したものになる(Photo32)と締めくくってMuller氏の基調講演は終了した。
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