トヨタが満を持して投入した「Toyota Safety Sense」は“普及”こそが使命安全システム Toyota Safety Sense 開発担当者 インタビュー(3/4 ページ)

» 2015年11月16日 09時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

「1個の単眼カメラで複数の機能を実現するのが大変だった」

MONOist 一方のTSSPは、トヨタ自動車が得意とするミリ波レーダーに単眼カメラを組み合わせた運転支援システムです。特徴はどういったところになりますか。

「TSSP」の5つの機能 「TSSP」の5つの機能(クリックで拡大) 出典:トヨタ自動車

山田氏 従来もミリ波レーダーと単眼カメラを同時に使うことはありました。しかしこの場合、単眼カメラはLDAの車線認識のためだけに用いていました。これに対してTSSPの単眼カメラは、車線認識だけでなく、車両認識と歩行者認識にも用いられています。

 一般的に、ミリ波レーダーの検知距離は約150mといわれています。単眼カメラとの組み合わせは、この検知距離を延ばすというよりも、形状を見る機能によりセンサーとしての分解能を高めて、運転支援システムの機能の精度を高めることが目的になっています。例えば、先行車両との間に他の車両が割り込んでくることがありますが、ミリ波レーダーだけよりもミリ波レーダー+単眼カメラの方が早い段階で検知できます。

 もちろん、先ほど話したTSSPの目的である歩行者対応では単眼カメラが重要な役割を果たします。ミリ波レーダーは自動車のような金属物を検知するのは得意なのですが、金属物ではない歩行者の検知に適しているとはいえません。このため歩行者認識は、単眼カメラとミリ波レーダーの組み合わせで行っています。

MONOist 単眼カメラはどういったものを使っていますか。

山田氏 画素数がメガピクセルクラスのカラーカメラです。車線認識や車両認識、歩行者認識の際には必ずしもカラーカメラは必要ないですが、赤系統のリヤランプを見分けなければならないAHBにはカラーカメラが必須です。

MONOist 各自動車メーカーの運転支援システムを見てみると、自動ブレーキのためのカメラと、AHBのためのカメラを別々に搭載している例があります。TSSでは、1個の単眼カメラで衝突回避支援型PCS、LDA、AHBを実現できています。

山田氏 TSSを開発する上では、交通事故の原因分析とそれに有効な機能を検討しました。路外逸脱による事故にはLDA、昼間よりも高くなる夜間の事故発生率を抑えるには視認性を向上できるAHBが有効です。そして衝突事故の被害軽減に役立つ衝突回避支援型PCSを含めて、事故低減効果の大きい3つの機能を必須のものとして選び、これらを1個の単眼カメラで実現することを目指すことになりました。

 とはいえ実際のところ開発はかなり大変でした。1個のカメラで1個のアプリケーションを実行するのはそれほど難しくはないのですが、1個のカメラで複数のアプリケーションを同時に実行するとなると一気に難易度が上がるのです。

MONOist TSSPのサプライヤについて教えてください。

山田氏 ミリ波レーダーを長らく供給してもらっているデンソーが中心で、一部コンチネンタルも関わっています。ミリ波レーダーは高価なセンサーといわれていますが、最初に採用した2003年と比べれば現在は10分の1くらいまでコスト削減されています。サイズも厚みについてはかなり薄くなりました。TSSPも、TSSCと同様に普及させたいことに変わりないので、こういった個別のセンサーのコスト削減は助かります。

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