MONOist 2013年10月に発表したARMv8-Rは車載分野を強く意識していた。現在の採用状況は。
ヨーク氏 車載ソフトウェアの規模はCコードで1億行に達する勢いで、それらが100個のECU(電子制御ユニット)に分散して組み込まれている。このように複雑化する車載ソフトウェアを管理しやすくするのがARMv8-Rだ。リアルタイム動作を保証しながら、ハードウェアベースの仮想化に対応するタイプ1(ベアメタル)ハイパーバイザをサポートしているので、1個のプロセッサコア上で複数のリアルタイムOSを走らせることができる。この機能を活用すれば、ECUの統合によるコスト削減も可能だ。
ARMv8-Rを新たに採用する企業は間もなく発表できるだろう(取材後にSTマイクロが採用を発表)。また、ARMv8-Rをベースとする新たなCortex-Rシリーズのコアプロダクトを2016年に発表する予定だ。
MONOist ARMにはグラフィックプロセッサコア「Maliファミリ」もある。車載分野のグラフィックプロセッサの用途として、GPGPUを用いた機械学習やディープラーニングがある。ARMはそういった取り組みは行っているのか。
ヨーク氏 現在、Maliファミリの展開はモバイル機器向けに注力しているのが現状だ。だが、自動運転技術への応用で注目されている機械学習やディープラーニングに利用できるプロダクトも開発中である。
ARMとしては、エレクトロニクスで自動車の進化を支えたいという思いがある。その一番分かりやすい形は交通事故の削減だ。ADASに強くコミットしているのは、交通事故の原因の80〜90%を占めるといわれるドライバーのミスをカバーするためであり、今後に向けて実用化が進むであろう自動運転技術にも貢献できるからだ。
私個人としても、長らく自動車業界へ関わってきたこともあり、自動運転技術の実用化に役立つとともに、死亡事故の撲滅、交通事故の削減に貢献したい思いは強い。
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