四柳がプールクリーナーのシェアを広げたのは、1985年ごろ。いわゆるバブルの時代で、それに続く健康ブームにより全国各地にスポーツジムが急増。これにより新設されたプールに同社のプールクリーナーが次々と納入された。「よく売れましたよ。自社ビルが建つくらい」と四柳社長は当時を思い出して笑顔になる。
当時は、国内にプールクリーナーを製造する会社が15社くらいあったという。大手企業が参入してきたこともある。しかし、各施設にプールクリーナーが行き渡れば、しばらくは製品の発注が無くなる。こうなればメーカー側に来る依頼は、消耗品であるフィルターの交換やマシンのメンテナンスなどの保守業務くらいだ。
このようにプールクリーナー市場は、非常にニッチな市場だ。現在、四柳の他にプールクリーナー事業を手掛ける企業は中国や韓国の2〜3社程度にまで減ったという。「プールクリーナーは市場が小さいんです。大手企業がやってもうま味があるわけじゃない。うちくらいに小さい会社だから、続けてこられた」と四柳社長は語る。
競合が次々と撤退していく中で、四柳は顧客からのクレームや要望を吸い上げながらマシンの改良を重ねてきた。社内に試験用プールを作り、製品を連続稼働させて動作テストを繰り返す。その結果2006年に誕生したのが、モーター駆動式の全自動プールロボット「ハイパーロボMRX-06」だ。
プールクリーナーは、水中を動き回りながらポンプで水を吸い込み、ネット(網)でゴミを拾うことで水をキレイにするという仕組みだ。しかしプールクリーナーがランダムに2時間も動き回ると、電源コードがねじれてしまうため、連続稼働できないのが従来の課題だった。
そこで四柳はハイパーロボMRX-06に、独自開発のリターンセンサーにより電源ケーブルが絡まないようにプールクリーナーがジグザグに走行できるようになる「マルチ エヌ・タッチ バックシステム」を搭載。これにより連続稼働の課題を解決し、夜にプールクリーナーをセットしておけば、翌朝までにプールの隅々まで清掃が完了できるようになった。
同社が開発した初期モデルのプールクリーナーは、今でも現行機種として稼働しているものもあるという。それらの保守も長年にわたって丁寧にサポートしてきた。こうして築き上げてきた信頼関係により、プールクリーナーを買い換えるとなれば、顧客はまた四柳の製品を選ぶ。こうした実直な取り組みが、累計1万台の販売台数と国内シェアNo.1につながったのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.