乗り物のヤマハ発動機がデザインした楽器という点で、FUJIN、RAIJINともにディティールを見ていくと、モーターサイクルのような雰囲気が盛り込まれているのは1つの“らしさ”であるだろう。
例えばFUJINには、モーターサイクルのタンデムシート風にデザインされたシートが装備されている。また、通常のマリンバでは、低音から高音までの木製の音板の下に、音を増幅させる共鳴パイプがずらりとついているのに対して、FUJINでは前側の一部にのみ取付けられている。その様子は、モーターサイクルのエキゾーストパイプが並んでいるようでもある。
RAIJINの方もフレームとそれを留めるブラケット、ブラケットに使われる締結のためのボルトといったものが見せる要素として作り込まれている。この様子なども、どことなくモーターサイクルの雰囲気を漂わせているといった具合だ。
しかし、こういったディティールの表現以上に、乗り物のヤマハ発動機によるデザインの“らしさ”を感じるのは「動きのデザイン」であることだ。楽器もモーターサイクルもモノ単体では半完成品のようなもので、演奏者やライダーを含めてデザインが完成するということは共通している。今回の2つの作品は、演奏者の「動き」を積極的にデザインしようとしているということが、通常の楽器のデザインとは異なる新鮮さを生んでいる。
ヤマハ発動機が価値創造へのキーワードとして掲げている“Refined Dynamism(洗練された躍動美)”を、楽器で表現してみたらこうなるという1つの答えとして見るのも興味深い。
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