ポルシェの「ル・マン」17年ぶり勝利を支えた「攻め」のマシン設計モータースポーツ(1/4 ページ)

ポルシェが1−2フィニッシュを飾った2015年の「ル・マン24時間耐久レース」。それまでのWECのレースで圧倒的な早さを記録しながら、耐久性に一抹の不安を残していたが、それをも拭い去る17年ぶりの勝利だった。後塵を拝したトヨタ自動車との違いは、「攻め」のマシン設計にあった。

» 2015年08月05日 11時00分 公開
[川端由美MONOist]

 2015年の「ル・マン24時間耐久レース(以下、ル・マン)」は、まれに見る接戦だった。きっと50年後の後輩ジャーナリスたちがル・マンについて語るときに、21世紀のル・マンで象徴的だったレースの1つとして、2015年の戦いを挙げるに違いない。ル・マン最多勝利の誉れ高いPorsche(ポルシェ)が1−2フィニッシュという完全復活を果たしたからだ。しかも、連勝を続けていたAudi(アウディ)と最後まで競った上に、初優勝の文字が目の前にちらついていたトヨタ自動車(以下、トヨタ)に待ったをかけた形となるなど、ドラマチックな展開が重なった。

ポルシェの1−2フィニッシュとなった2015年のル・マン ポルシェの1−2フィニッシュとなった2015年のル・マン(クリックで拡大) 出典:ポルシェ

 私自身、レース開幕前には「ポルシェの速さが突出して見える。ただし、予選で好成績を出したり、6時間耐久程度なら勝利できたりするマシンだが、24時間を戦い抜けるかといえば疑問が残る」とメモした。が、ゴールまで5時間を残す段階では「ポルシェは今年(2015年)、走行性能、ロバスト性の両面でマシンの完成度を上げてきた」と書いている。

ポルシェの勝利に沸くピット付近 ポルシェの勝利に沸くピット付近(クリックで拡大)

 実際に、予選の段階では、アウディとポルシェはトヨタを大きく引き離していた。しかし2014年のル・マンで、ポルシェは最後の1時間ほどでトラブルに見舞われている。確かに2015年に入ってからもポルシェは、FIA世界耐久選手権(FIA World Endurance Championships、WEC)シリーズで速さを見せつけていた。それでも24時間の耐久レースとなると、どんな魔物が潜んでいるか分からないというのが大方の見方だった。

 ハイブリッドシステムでアシストできる1周回当たりのエネルギー回生量が、2MJ、4MJ、6MJ、8MJから選べるルールは2014年と同じだ。しかし、アウディのマシン「R18 e-tron」は、2MJから倍の4MJに回生量を増やし、ポルシェの「919ハイブリッド」は目いっぱいの8MJを選択した。トヨタの「TS040ハイブリッド」は2014年と同じ8MJとなる。

 各チームの特徴をあげると、アウディは軽量化と空力性能の向上、ポルシェはパワートレインの高出力化と空力性能の向上、トヨタは2014年のマシンの熟成という方向性だ。アウディは連勝を、ポルシェは17年ぶり17回目の勝利を、トヨタはル・マンでの初勝利をそれぞれ目指す。

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