富士通は壁・机など部屋全体をUIにする技術を開発し、ホワイトボードやふせん紙のいらないデジタル会議の実証実験を開始した。スマート端末を起点に、複数人で同じ画面に資料を投影することができる。
富士通研究所と富士通デザイン、富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ(以下、富士通SSL)の3社は2015年7月27日、部屋全体をデジタル化するUI技術の実証実験を同年8月より行うと発表した。実験は富士通デザインが開設しているクリエイティブスペース「HAB-YU platform」(東京・港区)にて2016年3月まで行われる予定だ。
この技術は主に会議やワークショップなどで、情報共有やアイデア出しをスムーズに行うために開発された技術だ。利用者が持つスマート端末と室内の表示機器が連携しており、それぞれ共有したいスマート端末内の情報を、壁や机などに広がる"仮想ウィンドウ"へ展開できる。また、表示だけではなく、赤外光が出る専用ペンを使っての入力や、端末間の資料の受け渡しも仮想ウィンドウ上で容易に行える。
部屋の上部には、壁や机に映像を投影するプロジェクターと、個人を動きで特定するセンサー(Kinect利用)が設置されている。この上部に取り付けられたセンサーと、利用者が持つスマート端末のモーションセンサーのデータを付け合わせ、端末のIDと位置を特定する仕組みだ。
また、複数のプロジェクターとスマート機器の連携には富士通研究所が2014年4月に発表した、ローカルな場での複数機器の情報交換が迅速に行える「プレイスサービス基盤」の技術が利用されている。これらの技術により、大画面と人の動きが連動した直感的なUI技術の開発に成功したという。
同社の説明員は「ワークショップのような数百単位のアイデアが出る場では、アナログ(紙)で共有するには限界がある。この技術を使えば、情報共有もたやすく、キーワードで検索をかけたり、途中保存を行ったり、10分前の論点に戻るようなことも可能だ」と利点を説明した。
実証実験は、利用者が所有する端末ではなくHAB-YU platformで貸し出されるスマート端末を使うことでUI技術を体験することができる。将来的には全てのスマート端末に対応し、実用化に向けて検証を進めつつ、2016年の発売を目標としているという。
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