さて、ここまでの話はHomeKitという、いわばiOS上で動くアプリケーション側の話を中心にしてきたが、対象となるモノがホームオートメーションというからには、iOSデバイスとつながる形で別のハードウェアも必要になる。というか、通常はまずハードウェアを作り、次にiOSとつなぐという手順になるハズだ。
AppleはHomeKitの提供に際して、ここに網を掛けた。それがMFi(Made For iPhone/iPad/iPod)である。元来MFiは、iPhoneやiPad、iPodといった同社の製品向けアクセサリの認証プログラムである。身近なところではLightningケーブルがそれで、ちゃんと動作するサードパーティ品は全てMFi認証を取得しているはずだ(でないと現実問題として動作しなかったりする)。HomeKitにおいてもこのMFi認証が必須となった。つまりHomeKit経由で接続されるデバイスは、全てMFi認証を取得しなければいけない。
現実問題として、iPhoneやiPadなどの製品の場合、Wi-FiかBluetoothしか通信手段を持っていないから、デバイスは必然的にこのどちらかを利用して通信を行う事になる。この際に利用されるのがHAP(HomeKit Accesory Protocol)で、HomeKit Frameworkを使ったアプリケーションはこのHAPを利用してデバイスと通信を行うのでHAPをサポートしなければならず、このためにはMFiが必要になる(MFiを取得せずにHAPを利用することは出来ない)という仕組みだ。
これが便利か不便か、というのは見方次第である。イチからHAPを完全にインプリメントするのは非常に骨だが、多くのメーカーがHomeKit(というかMFi認証)に対応したデバイスを提供している。Microchipは汎用Bluetoothモジュールの開発キットとは別に、MFi準拠の開発キットも用意しており、こちらを利用する事でHAPに対応したプロトコルスタックなどが入手できるようにしている。
また、Marvellは2015年3月に、同社の「EZ-Connect IoT platform」向けに、HomeKitへ完全対応したSDKを提供する事を発表している。
別にHomeKitに対応するのはこの2社だけではなく、IoTに関連する半導体製品を出しているメーカーは程度の差こそあれ、何らかの形でHomeKitへの対応を行っている。これらを利用すれば、HomeKitへの対応はそう難しい事では無い。
こう見ると、HomeKitはIoT製品を企画している開発者にとって福音に思えるかもしれないが、良いことばかりでは無い。
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