――DRCは自律でも遠隔操縦でもOKです。どのような戦略で競技に臨みましたか
金広氏: 通信状態が悪くなる時間帯があるので、「自律でやる」というのが基本的な考え方です。ただし、タスクによって、自律の度合いは変わります。
例えばバルブを回すタスクでは、最初にレーザーレンジファインダで全体を計測しますが、広い視野の中からバルブを見つけ出すのは、コンピュータにとっては大変な処理。そのため、オペレータが大体の場所だけは指示を出しますが、以降は全て自動になっています。
一方、ほとんど自律になっていなかったのは、2日目のサプライズタスクです。これはプラグを抜いて刺すというタスクでしたが、オペレータがロボットから送られてくる画像を見ながら、プラグの位置を一生懸命調整していました。
――他のチームの戦略はどうなっていました。
金広氏: 現場は準備で忙しく、他のチームの状況を見ている余裕は無かったのですが、早いチームのロボットは、より自律化が進んでいたのではないでしょうか。
――遠隔操縦の方が早いのかと思っていましたが、逆ですか?
金広氏: 通信状態が良ければ遠隔操縦をガリガリやった方が早いですが、今回はかなり通信が制限されていたので、そうだろうと推測しています。
――不整地のタスクはどのよう対処しましたか。
金広氏: 足を着地する候補地点を自動で計算して、それをオペレータに提示するようにしていました。そのままGOを出す場合もあるし、修正することも可能です。大体はそのままで良かったですが、「もう少しこっちの方が安全かな」と思って、多少直すこともありました。
――2日目、不整地を歩き終わったところで転倒しました(下動画 2:10:58)が、あれは何が起きたのでしょうか。
金広氏: あの瞬間のデータが残っていないので、確実なことは分かりませんが、ビデオの映像を見た限りでは、路面を計測したデータが、実際の高さとは少しズレていて、ちょっとつまずいたような形になったのではと推測しています。
――初日、ドアを開けようとして後ろに転倒したのも衝撃的でした。
金広氏: あれはソフトウェアのバグが原因でした。
梶田氏: ドアのレバーを回して開けようとして失敗し、レバーから手が外れてしまいました。そこで、いったん腕を初期位置に戻し、もう一度レバーをつかみに行こうとした瞬間に、ソフトウェアのバグであの現象が起きました。私はドア担当だったので、私の操作ミスで転んだのかなと思って、目の前が真っ暗になりました。
ドアのタスクは前日のリハーサルでは、全く問題なく成功していました。しかし、ドアが開くレバーの角度は、実はコースによって違っていたのです。リハーサルのコースは30度で良かったのですが、初日のコースはドアノブのバネがかなり硬い上、70度回さないと開きませんでした。ドアの特性がコースごとに違う可能性に注意していなかったのは大きな反省点です。
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