――産総研チームは2足歩行が前提ですが、DRCは車輪型や4足歩行などでも参加が可能です。今回の競技内容だと、そちらの方が有利ということはなかったですか。
金広氏: 2013年に開催されたDRCのトライアル(予選)では、かなり急な階段が設置されていて、車輪型ではできないようなタスクがありましたが、ファイナルではそれが緩められたような感じでした。いろんな形態のロボットでも可能なタスク設定になっていたので、それに特化したロボットを作られると対抗するのは大変だろうなとは思っていました。
――優勝は難しいと最初から思っていた?
金広氏: もちろん最初から諦めていたわけではありませんが、かなり厳しい戦いになることは感じていました。でも2足歩行が不利かというと、そうとも限らない。実際、2足歩行ロボットのAtlasが2位に入っています。
梶田氏: 2位のAtlasは純粋にヒューマノイドですし、優勝したDRC-Huboも、車輪が付いてはいますがヒューマノイドと言えないこともない。5位のRoboSimianのように、環境に特化したロボットが圧勝して、ヒューマノイドは全滅するのではないかという恐れを抱いていたので、この結果は予想外でした。これだけヒューマノイドが善戦していたのはむしろ喜ぶべき結果だったと思います。
――2位のTeam IHMC Roboticsを始め、プラットフォームとしてAtlasを採用したチームが多かったですが、Atlasの印象は。
金広氏: 私が一番驚いたのは、転倒したときでも、人間に吊り上げてもらえば、すぐに競技に復帰できていたことでした。われわれのロボットは2回転びましたが、その2回とも、競技の継続を断念しています。Team IHMC Roboticsは初日にAtlasが2回倒れたものの、その場で復帰して7点を獲得している。これはかなり衝撃的でした。
最初から倒れても大丈夫な設計になっているのか、詳細については分かりませんが、背中に大きなバックパックが付いているので、背中からゴロンと倒れる分には、それほどダメージは無いのかなという印象は受けました。
――トライアルでは認められていた転倒防止用ヒモの使用がファイナルでは禁止され、競技中に倒れることがあるのは当然、想定していたことだと思います。産総研では10年以上も前に、転倒制御に関する発表を行っていたので、今回のロボットにはその成果が入っているのかと思っていましたが。
金広氏: 「入っていなかった」というのが正直なところです。研究発表では様々な機能のデモを行いますが、そうやって開発してきた機能が全て1つの機体に蓄積されてきたかというと、じつはそうなってはいません。それに転倒制御については、まだ歩行中に使えるようなレベルにはなっていませんでした。
――今回の大会では、等身大のヒューマノイドがバタバタ転倒していたのが衝撃的でしたが、もし起き上がることができていたら、かなりインパクトは大きかったでしょうね。転倒から自力で起き上がったロボットは全くいなかったのですか?
金広氏: 3位のCHIMPというロボットが、ドアを通過するときに転倒して、そこから復帰したのが唯一起き上がった事例だと言われています。CHIMPはクローラで移動するロボットなので、2足歩行のヒューマノイドでは1つも無いですね。
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