確かに10位という「結果」だけを見れば惨敗だ。だが、ロボットサッカーの競技会「ロボカップ」などもそうであるが、本来、こういった大会は、ある競技課題を設定して、各チームがそれに向けて技術を開発、競技を通じて交流を深め、情報交換することによって、技術革新を促進するのが狙いだ。優勝賞金は出るものの、決して順位を競うだけのレースではない。
純粋に「勝利」だけを追求するのであれば、その競技に最適化した―しかしそれ以外に応用が利かないような―ロボットを開発することも可能だろう。だが、自らの研究テーマをブラッシュアップする場として捉えていれば、出場ロボットの形はある程度限られる。例えば、ヒューマノイドの研究者であれば、当然、出場するのはヒューマノイドになるだろう。
誤解している人もいるかもしれないが、DRCはヒューマノイドに限定した大会ではない。2足歩行である必要はなく、4足歩行でも車輪型でも構わない。実際に4位になったTeam NimbRo Rescueは車輪型のロボットだった。多様なロボットが考えられる中で、最初から形態を限定するのは、競技として見れば、一種の"制約"になってしまう。
どのような目標を持って参加し、それによってどんな成果が得られたか。何よりも知りたいのはそこだ。順位のみにこだわるのではなく、筆者としては、もっと内容そのものに注目したいと思う(ただし、各タスクを安定してこなし、優勝した韓国チームの技術は称賛すべきだろう。決して順位に意味が無いと言うつもりはないことは補足しておきたい)。
筆者はスケジュールが合わず、残念ながら現地に行って取材することが出来なかったのだが、DRCの公式WEBサイトで公開されている動画を見るだけでは、中で何をやっているのかは良く分からない。詳しくは当事者に直接聞かないと分からないので、今回、TEAM AIST-NEDOの産業技術総合研究所(産総研)に取材を申し込んだところ、快諾を得ることができた。
インタビューに応じて頂けたのは、知能システム研究部門ヒューマノイド研究グループ研究グループ長の金広文男氏と同 主任研究員の梶田秀司氏。金広氏はTEAM AIST-NEDOのチームリーダーである。この両者に、DRC参加の目的、現場での状況、海外との差、今後のロボット開発などについて、詳しく聞いた。
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