近年、国内の自動車部品サプライヤを悩ましてきた課題の1つに、自動車向け機能安全規格であるISO 26262に対応した開発体制の構築がある。ISO 26262は2011年11月に正式発行したが、3年半近く経過した現在でも、ISO 26262への対応が完了していないサプライヤも数多く存在する。
これに対してジェイテクトは、ISO 26262への対応を先行して進めてきた国内メガサプライヤの1つとして知られている。正式発行前の2011年10月には、ISO 26262に準拠した開発体制の構築を発表しており、その後も社内の製品開発体制をISO 26262に対応する組織変更を順次進めてきた。また。品質保証部の傘下に機能安全監査グループを設置することで、機能安全の監査やアセスメント、機能安全に関わる教育を行えるようにしている。
同社がISO 26262対応で先行してきたのには理由がある。ISO 26262では、自動車を構成する各車載システムに、ASIL(Automotive Safety Integrity Level)という安全性要求レベルが設定される。自動車の運転操作で重要な役割を果たすEPSは、このASILで最高レベルとなるASIL Dが要求される車載システムの代表例に挙げられるほどなのだ。
ジェイテクトのシステム開発部の部長を務める賀治宏亮氏は「車載システムの各故障モードへのASILレベルの割り当ては自動車メーカーが決めることだ。しかしEPSの場合、ステアリングが勝手に回る『自転』と、逆に回らなくなる『ロック』についてはASIL Dが指定されるのが一般的だ。ISO 26262について最も厳しい要求がある車載システムの1つと言っていい」と強調する。
ISO 262626に対する要求が厳しいEPSで世界トップシェアである以上、ジェイテクトがISO 26262への対応を急いだのは当然のことだったと言えるだろう。
同社のEPSにおけるISO 262626対応の最新成果となるのが、2016年1月発売の新型「アルファード/ヴェルファイア」に採用されたEPSだ。このEPSは、ドライバーのステアリング操作を検出するトルクセンサーと、アシストトルクを発生させるモーター駆動部について、二重化による冗長設計を施している。
「当社のEPSにおけるISO 262626対応は、ソフトウェアでのバックアップ制御と、電気システムの冗長化が2本の柱になっている。現在注目を集めている自動運転技術が実用化されるようになれば、万が一の安全確保のためにも冗長化の仕組みは必須になるだろう。冗長化を、トルクセンサーやモーター駆動部以外にも広げていけるように開発を進めていきたい」(賀治氏)という。
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