Appleが「WWDC 2015」で発表した「iOS」の最新バージョン「iOS 9」には、「WWDC 2014」に引き続き、自動車関連で目玉になるような新機能はなかった。ただし、自動車向けとは一切言及されていないものの、車載情報機器市場に大きな影響を与えそうな新機能が発表されている。「iPad」向けの画面分割マルチタスク機能である。
Apple(アップル)は2015年6月8日(米国時間)、同社のアプリケーション開発者向けカンファレンス「World Wide Developers Conference(WWDC) 2015」を開催した。WWDC 2015では、スマートフォン「iPhone」やタブレット端末「iPad」などのOS「iOS」の最新バージョン「iOS 9」が発表されたが、2014年の「WWDC 2014」に引き続き、自動車関連で目玉になるような新機能はなかった。iPhoneと車載情報機器を連携させる機能「CarPlay」の接続方法として、有線だけでなく無線でも可能になるという「Wireless CarPlay」の発表があった程度である。
ただし、自動車向けとは一切言及されていないものの、車載情報機器市場に大きな影響を与えそうな新機能が発表されている。iPad向けの画面分割マルチタスク機能だ。
ITmedia PC USERの報道にある通り、「iPad Air」「iPad mini 2」以降の製品では、「Slide Over」機能によって2つ目のアプリを細長いバー状に起動することができる。さらに、「iPad Air 2」には「Split View」機能が追加され、均等に画面を2分割し、2つのアプリを同時に扱えるようになった。
これまで、iPhoneやiPadでカーナビゲーションアプリを使う上での最大の課題は、シングルタスクであるが故に、カーナビゲーションを行っている間は基本的に他のアプリを使えないことだった。今回、iPadだけとはいえ、他のアプリ操作を可能にするSlide Over機能や、画面分割マルチタスクが行えるSplit View機能が使えるようになるということは、カーナビゲーションアプリの他に、助手席の同乗者向けに映像コンテンツを再生するといったことが可能になることを意味している。
以前ホンダが、超小型電気自動車(EV)「MC-β」向けに、市販の7インチAndroidタブレット端末(東芝製)をベースにした車載情報端末を開発した際に、複数アプリの同時表示や直接操作を可能にする専用アプリを実装していた(関連記事:ホンダの超小型EV向け車載情報端末、市販タブレットに専用アプリを実装して実現)。
開発担当者は「一般的なカーナビゲーションシステムは、カーナビゲーションの画面を表示している間でも、音楽再生やラジオの操作も行えるようなユーザーインタフェースになっている。しかし、スマートフォンやタブレット端末は、カーナビゲーションアプリではカーナビゲーションの操作しかできず、音楽プレーヤーを操作したければアプリを切り替えなければならない。これでは、運転操作に支障が出てしまう」とコメントしていた。
つまり、これまでのiPhoneやiPadが、カーナビゲーションアプリを使っている間は、カーナビゲーション単体機能しか使えないデバイスだったとしよう。これに対して、iOS 9以降のiPadは、カーナビゲーションアプリと同時にエンターテインメント機能などを利用できる本格的な車載情報機器になり得るというわけだ。
iOS 9のリリースは2015年秋となっているが、この画面分割マルチタスク機能を前提とした自動車向けアプリが同時に登場しているかもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.