いわゆる「スマートホーム」を目指す各社の取り組みで、AppleやGoogle、Microsoftなどが注目しているのが、音声コントロールだ。「Amazon Echo」や「Nest」「Homekit」などで欧米各社が実用化に向けて走り出す中、日本企業は出遅れているとの声がある。
米Amazonが2014年11月に発表した、音声アシスタント機能を搭載した家庭用スピーカー「Amazon Echo」。199ドルと安価ながら常時Wi-Fiによってクラウド(AWS:Amazon Web Services)に接続されており、「Alexa」と呼び掛けてから質問すると回答し、搭載する学習機能によって、話しかければ話しかけるほど精度は上がっていく。
天気予報や時刻、Wikipediaでの用語定義などWeb上で得られる情報を音声で回答するほか、アラーム設定やAmazonのシッピングリストへのアイテム追加なども行える。「U2の音楽をかけて」とリクエストすれば、YouTubeを検索して音楽を再生するといったことも可能だ。
情報通信総合研究所 ICT基盤研究部 第二グループの中村邦明は「本格化するリビングルーム戦略 Amazon Echoを投入したAmazonの狙い」と題した講演の中で、いわゆるスマートホームを目指す各社の中で、“音声アシスタント(音声コントロール)”が大きなポイントになり、そのなかで日本勢には遅れが見えると指摘する。
現在のスマートホームにおける家電操作においては、スマートフォンと対応するアプリが必要となるケースが多く、操作においては複数のアプリを切り替える必要がある。それはつまり、物理的なリモコンがスマートフォンに集約されただけともいえる。それはそれでメリットといえるが、「Amazon Echo」を投入したAmazonを始め、GoogleやAppleなどはさらに一歩進み、「家庭内のハブになる機器に音声アシスタント機能を搭載し、家電全てをハンズフリーで制御する」というアプローチをとっている。
Googleは2012年に音声認識可能なパーソナルアシスタント「Google Now」を発表、2014年には学習機能付きサーモスタット「Nest」を開発する「Nest Labs」を買収しており、2014年末にはNestのGoogle Now対応が行われ、音声によって室内の空調管理を行えるようにしている(関連記事:「家」を変えたサーモスタット「Nest」)。また、これに加えて最近では、利用者の位置情報を利用し、帰宅時間が近づくとNestによって室内の温度を調整するといった音声すら利用しない、空調のスマート化にも着手している。
Appleは音声アシスタント「Siri」を2011年より提供しており、2014年には音声認識技術を持つ英Novauris Technologiesを買収。同じく2014年にはiOSで家電制御を行うための開発フレームワーク「Homekit」を公開しており、SiriとHomekitを組み合わせることで、冷暖房や照明などを音声制御するための基盤を整えている。
2015年7月に最新OS「Windows 10」を投入するMicosoftにも動きがある。音声アシスタント「Cortana」をほとんど全ての同社製品に搭載するプランを明らかにしており、その中には同社の家庭用ゲーム機「Xbox One」も含まれる。
以上の3社はいわゆるITl企業だが、それ以外の分野の企業からもリビングを目指した音声アシスタントの活用は進もうとしている。米ケーブルテレビ大手のComcastは受信用セットトップボックスに音声コントロールを追加する方針である他、通信大手AT&Tも提供するホームセキュリティ/オートメーションシステム「Digital Life」へ、音声認識技術の投入を示唆している。
リビングを目指すのは大企業だけではない。音声による家電制御を目的としたデバイス投入は各国のベンチャー企業(Athomの「Homey」や Interactive Voiceの「Ivee」など)も参入しており、リビングを舞台に、音声コントロールを武器とした各社の覇権争いは始まったばかりながらも過熱する様相を見せている。
しかし、中村氏は「その争いに日本は出遅れている」と指摘する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.