損失が問題となるような基板配線では、配線の特性インピーダンスが50Ωにコントロールされている場合が普通です。
一般のFR-4基板で配線のインピーダンスを一定にするには層厚によって配線幅を変更します。
層の厚さはビルドアップ基板では75ミクロンから100ミクロン程度、一般の積層基板では100ミクロンから200μ程度が一般的です。
では、FR-4基板でシングル配線50Ωで配線長さが10cm(100mm)の場合の損失を検討してみます。
表1に示すのは、外層配線で層厚を変化させた場合、配線のインピーダンスを50Ωにした場合のおおよその配線幅です。
材料の誘電率は1GHzで、FR-4=4.2、高周波用材料は3.66としました。実際の誘電率は同じFR4でもメーカーの違いや厚さ、コア材とプリプレグの違いなどでも異なりますが、ここでは1つの例として、この値を使用しました。また、実際の基板では基板表面にはレジストが塗布されていて、配線特性にはこのレジストの影響が小さくありませんが、ここでは、レジストは塗布されていない状態で検討しました。
レジストの厚さの均一性や、電気特性などは結構なばらつきがあり、配線特性にもばらつきがでます。
図9にFR-4基板で層厚を変えた場合の50オーム配線での損失を示します。層厚が厚くなるに従い、50Ωを保持するための配線幅が広くなります。
シミュレーション結果を見ると、層厚が厚く、配線幅が広くなるほど損失が小さくなることが分かります。
図10は基板材料を高周波用の低損失材に反抗した場合の損失です
高周波用の材料は誘電損失(誘電正接=tanδ) が小さいだけではなく、誘電率もFR-4材に比べ、小さくなっています。このため、同じ板厚で50ΩにするためにはFR-4基板に比べ、配線幅が広くなります。低誘電材も層厚が厚く、配線幅が広いほうが損失が小さくなっています。さらに、FR-4基板より、この傾向が大きく出ています。きれは誘電損失が小さいため、配線幅が広く、抵抗損失が小さくなるほど損失が小さくなるためです。
図11は図9と図10を重ね合わせたものですが、基板材料による損失の違いがよく分かります。
次に、基板材料を高周波信号用の低誘電率、低損失基板材料で検討してみます。
解析の層構成は表2に示します。
ここでは、表層配線との比較のため、層厚を変更して、配線幅を表層配線と同じになるようにしています。また、FR-4材と、低損失材での配線幅の変化をなくすため、信号線層間の厚さを変更しています。
図12はFR-4の外層配線と内層配線での、損失の違い、図13は低誘電体の場合です。
図12と図13を比べると、図13の方が表面層配線と内層配線の差が小さいことが分かります。これは、低損失材の誘電損失が小さいためです。
また、線が多くて分かりにくいですが、図14は図12と図13をまとめて表示したものです。
解析結果を見ると、FR-4材、低損失材ともに、表層配線よりも内層配線の方が損失が大きくなっています。これは、表層配線では配線の片面は空気になっていますが、内層配線では、配線に上面、下面が両方とも誘電体となっているためです。空気の比誘電率は1、誘電損失はないので、表層配線の場合、誘電損失は片面のみとなります。内層配線では、配線の、上下両面で誘電損失が発生します。逆にいうと、外層配線と内層配線の損失の差は、片面の誘電損失があるかないかの違いとなります。
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