いまさら聞けないPROFINET入門産業用ネットワーク技術解説(2/5 ページ)

» 2015年03月24日 09時00分 公開

PROFINETの構造

 イーサネットベースの産業用ネットワークは、大きく分けると「フィールドバスでイーサネットとの共存を狙ったもの」「イーサネットの高速性を同期制御用途に活用したもの」に分かれます。通常、イーサネットとの共存を狙ったものは図2(1)(2)、高速性を狙ったものは(3)に分類されます。

 PROFINETはシンプルに統一されたネットワークであり、あらゆる機器を同一ネットワークに接続できるように作られています。このため、PROFINET機器は(2)および(3)のいずれかに分類されます。

photo 図2:イーサネットベースの産業用ネットワークの分類(クリックで拡大)※出典:シーメンス

 図2(2)は、IEEE 802.3に準拠した標準フォーマットを採用しているものの、TCP/IPやUDP/IPのヘッダを介さずPROFINETのデータを組み込めるようにしたものです。TCP/IPやUDP/IPヘッダがない分だけフレームサイズを小さくでき、イーサネットの帯域消費量を減らせます。PROFINETでは「RT(Real Time)通信」と呼んでいます。IPパケットのイーサタイプは0x0800ですが、PROFINETでは0x8892をIEEEに登録しているため、一般的なスイッチングハブを介してもPROFINETのデータを認識できます。図3にPROFINETのフレーム構造を示します。

photo 図3:PROFINETのフレーム構造(クリックで拡大)※出典:シーメンス

 IEEE 802.1Qで標準化されている優先度タグ内にはフレームの転送優先度を設定する3ビットのフィールドが含まれています。PROFINETではこのフィールドに高い優先度を設定しているため、TCP/IPデータよりも優先してPROFINETのデータが転送されリアルタイム性を確保しています。

 図2(3)は、専用ASICを使うタイプのものです。イーサネットと共存されるもののITのデータ通信(TCP/IPやUDP/IP通信)が行えるかどうかは各産業用ネットワークの仕様に委ねられます。PROFINETでは「IRT(Isochronous Real Time)通信」と呼んでいます。

 PROFINETはITのデータ通信も行えることを大前提にしているため、1回の通信周期内に必ずITのデータを通す時間があり、残りの時間をPROFINETの専用回線としています。IRT通信対応機器は同一の時刻を持っていて、確実に決まった周期でデータ転送が行える仕組みを持っています。通信周期ごとのジッタ(ゆらぎ)は1μ秒以内に規定されています。IRT通信は同期制御が必要なアプリケーションで使われ、一般的にはドライブとそのコントローラーが対応しています。

PROFINETのパフォーマンス

 PROFINET機器の通信速度は100Mbpsです。PROFINET機器は、全二重通信、自動極性制御(Auto Polarity)、Auto-MDIX(ストレート/クロスの自動判別機能)、オートネゴシエーションなどのIT技術で培われた機能に対応しています。

 PROFINETの最新仕様では、ITのデータ通信も行いながら最短31.25μ秒周期でIRT通信を行うことが可能です。IRT機器間での時間差は1μ秒以内に抑えられていて、高精度を実現します。

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