公差解析やコンフィグツールに注目 ――CADユーザーが見た最新3D設計ツールSOLIDWORKS World 2015(3/3 ページ)

» 2015年03月12日 10時00分 公開
[土橋美博/飯沼ゲージ製作所,MONOist]
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コンフィグレーションツール

 もう1つ触れておきたいのがコンフィグレーションに関するツールです。SOLIDWORKSはパラメトリックな設計を管理する「Configuration Manager」が搭載されていますが、これをより高度化させたものが、Tacton Systems AB社の「TactonWorks」となります。TactonWorksではAPIやカスタマイズによってモデリングの自動化が可能です。同製品は日本国内でも2010年より販売開始されています。

 私自身もTactonWorksの評価に関わりましたが、その有用性は確かだと考えています。TactonWorksを運用するに当たっては、設計の考え方をルール化することが必要かつ重要です。ツール自体の効果のみならず、ルール化そのものによる効果も得られることを実感しています。また導入することでモジュラーデザイン化も図れるでしょう。

 ただし設計ルールをツールのロジックに落としていくところが運用者側としては分かりづらく、さまざまなアセンブリに対してTactonWorksを展開する上では気になるところです。設計の自動化が100%ではないとしても、設計者の負荷を低減させられる仕組みは有効ではなかろうかと、展示を見学をしながら更に実感しました。

 「TactonWorks Online」という製品では、例えば顧客サイト内で製品を自動構成して部品表を生成したり見積書を作成したりするといった機能がありました。今回、それをより便利にしたようなツール「Lino 3D Layout for SolidWorks」が初披露されました。個人的にも日本での提供が待ち遠しいツールです。

 同ツールは営業担当がユーザーとして想定されているとのことで、LEGOブロックを組み立てるような感覚でのオペレーションで、大規模なアセンブリの操作性も良いとのことです。大規模アセンブリの表示を軽くする仕組みの裏では、Tacton WorksをSOLIDWORKS上で動かしているとのことです。構想設計のみならず、その後の詳細設計への展開も期待できるのではと思います。ウォークスルー機能もあり、大規模なラインなどの構想にも向いていそうです。

Lino 3D layoutとTactonWorksのデモ

 私が経験した装置設備開発の現場では、構想状態のものは3次元データで表現できておらず、2次元図面を使って顧客と打ち合わせをしていました。これが3次元化できれば、2次元図面が理解できない顧客とのコミュニケーションを取る際に非常に便利です。Lino 3D Layout for SolidWorksは、3次元CADを使用しない(または使用できない)設計関連のマネジャー、技術営業にも有効なツールだと思います。

ハードウェア関連

 過去のSOLIDWORKS WORLD展示会場にあったようなビジュアライゼーション(可視化)に関する展示は今回ほとんど見られませんでした。私が見たところでは、それ関連は3次元ビュワー「eDrawings Professional」によるVR(バーチャルリアリティ)のデモ展示くらいでした。

 3次元CADでのデザインレビューの視認性は2次元CADに比べてはるかに優れています。しかしモニターの画面越しに見る3次元データは、結局2次元です。3次元データを“リアルな3次元”で見ること(立体視)が可能で、その際のレビュー情報も持ち合わせることが可能なツールがあればいいなと思います。来年以降のSWWで、そんな製品が展示されることを期待しています。

 設計環境関係としては、SOLIDWORKSが仮想環境で利用できる新製品「HP DL 380Z GEN9 Virtual Workstation」がHewlett Packard社のブースで展示されていました(残念ながら撮影禁止でした)。こちらを使うと、SOLIDWORKSがインストールされていないマシンからもリモートでSOLIDWORKSのオペレーションが可能です。この仮想化では「NVIDIA GRID」を使用しています。「SOLIDWORKS 2014」では、試験、認証、サポート済みのプラットフォームとのことです。高スペックのワークステーションでないと動かないと言われてしまうSOLIDWORKSですが、このような製品があれば設計環境がさらに改善されていきそうですね。

紹介しきれないほど展示がたくさん

 他にPDM連携のシステムやFEAの展示など、技術トレーニングセッションの間を縫って見るには時間が足りないと感じるほど盛りだくさんでした。「社内で3次元データを使い倒し、その効果を得る」という点では、さまざまなソリューションが展示された会場であり、SOLIDWORKSにより設計された実物に触れることができるのも、1つの魅力だと感じました。

 C&Gシステムズ社、Amada America社、Roland DGA社といった日系企業による展示もありました。プロダクトショーケースを含め、SOLIDWORKSにかかわる人の祭典であるSWWに日本の企業がもっと参加すれば、そのコミュニティへの参加やPRができるのではと思いました。

プロダクトショーケースの展示
FABLABによる展示

 メカ設計者、3次元ツール推進者という偏った視点とはなりましたが、少しでも会場の雰囲気を伝えることができれば幸いです。さて来年の「SOLIDWORKS World 2016」(2016年1月31日〜2月3日:米国テキサス州ダラスで開催)では、どんな展示が行われるのでしょうか。今から楽しみです。

Profile

土橋美博(どばし・よしひろ)

1964年生まれ。長野県茅野市にある株式会社飯沼ゲージ製作所で3次元CADを中心としたデジタルプロセスエンジニアリングの構築を推進する。ソリッドワークス・ジャパンユーザーグループ(SWJUG)の副代表リーダー・事務局も務める。



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