日本の新たな宇宙計画、その背景にある安全保障と宇宙産業の関係性:宇宙開発(3/3 ページ)
日本政府が2015年1月に決定した新宇宙基本計画は、先述した日本の安全保障を取り巻く環境の変化や、国内の宇宙機器産業の停滞といった課題が大きく反映された形となった。安全保障に関するものでは、GPS(全地球測位システム)に利用する準天頂衛星を、現在の4基から7基体制にする計画や、ミサイルの発射を探知する早期警戒衛星の研究などが盛り込まれている。
こうした安全保障政策と連携した宇宙政策、今後の日本の宇宙産業基盤の維持と強化、さらに宇宙インフラに関する中長期ビジョンの検討などは、2014年6月に新計画の作成に向けて内閣府の宇宙政策委員会に設置された基本政策部会が担ったという。
日本政府が2015年1月に決定した新宇宙基本計画の概要(クリックで拡大)出典:京都大学
西本氏は新宇宙基本計画の特徴として、従来の計画では5年の中期計画だったのに対し今回は10年の長期計画として発表されている点を挙げた。また、どの衛星をいつまでに打ち上げるのかといった詳細なスケジュールも工程表として公開されている。
政府がこうした見通しを明示することで、宇宙関連企業が戦略的に開発を行いやすくする狙いだ。具体的には今後10年の間に人工衛星や探査機など計45機の打ち上げ目標が掲げられている。
また、今後10年間で、日本の宇宙産業規模を官民合わせ合計5兆円まで拡大する方針も示された。資源、エネルギー、気候変動など、地球規模の課題の解決に貢献する貢献する宇宙システムの整備を進め、こうしたシステムによって蓄積されるビッグデータを利用した新サービスの創出にも取り組むとしている。
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