それでは、こうした問題、課題を解決するためにどのような考え方で事に当たるべきか。報告書では「ロボット革命」の表現を使い、その内容を以下のように定義づけている。
センサー、AIなどの技術進歩により、従来はロボットと位置付けられてこなかったモノまでロボット化し(例えば、自動車、家電、携帯電話端末や住居までもがロボットとなる。)、製造現場から日常生活のさまざまな場面でロボットが活用されることにより、社会課題の解決やモノづくり・サービスの国際競争力の強化を通じて、新たな付加価値を生み出し利便性と富をもたらす社会を実現する。
そのためには、ロボットをある用途に特化した専用機ではなく、多種多彩な要望に応えられる汎用性の高い、誰もが使いこなせる存在にすることことが必要だとする。さらにITとの融合を念頭に置き、データ駆動型のイノベーションに対応していく必要があると主張する。
将来的にはロボットという概念が変化していくことを念頭に置き、ロボットとロボット技術を活用できる社会基盤整備も欠かせないとしている。これまでロボット言えばセンサー/制御(知能)/駆動の3要素を備えた機械と定義されてきたが、ネットワーク化によって駆動系を持たない“ロボット的な存在”の登場も予想される他、このような旧来的な枠に収まらないロボットが人間と協調していくことを考えると、現在の法整備や運用ルールではロボットの力を最大限に引き出すことができないかもしれないからだ。
こうした「ロボット革命」を実現する報告書では3つの“世界一”戦略を提案している。
・世界一のロボットイノベーション拠点
産官学連携やユーザー/メーカーのマッチング機会などを増やして技術革新を誘発させていく体制の構築、人材育成や次世代技術開発、国際展開を見据えた規格化・標準化の推進。
・世界一のロボット利活用社会
ものづくりやサービス、介護医療、インフラ・災害対策、建築、農業など幅広い分野で“使える”ロボットを作りだし、活用するため、ロボット開発と導入を戦略的に行うと共に、ロボットを生かすための環境整備。
・世界一のロボット戦略
ロボットが相互接続し自律的にデータを蓄積・活用することを前提としたビジネスを推進するためには、接続やデータ収集に関するルールや国際標準を獲得することが必要であり、そのためには前提となるセキュリティの確保や安全に関する標準化が求められる。そうした、データが重要視される社会を見据えた戦略の構築。
戦略の具体的な行動指針(アクションプラン)については次項で解説するが、報告書ではロボットが単なる人の代替物として機能するのではなく「人と補完関係にあり、人がより高付加価値へシフトできるようなパートナーとしてのロボット」を有効活用するという視点を掲げていくことが重要であるの1文で第1章を締めくくっており、単純にロボットを高性能化すれば良い、新技術を投入すれば良いといった、直線手的な発想に警鐘を鳴らしている。
後編では、5カ年計画として掲げるアクションプランについて、その内容を読み解いていく。
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