「ロボット革命」と「3つの世界一」、政府「ロボット新戦略」を読み解く(前編)ロボット革命実現会議(1/2 ページ)

日本再興戦略の一環として開催されていた、有識者会議「ロボット革命実現会議」の議論結果が公開された。前後編に渡り、その提言書を読み解く。

» 2015年02月03日 12時00分 公開
[渡邊宏,MONOist]

 少子高齢化や労働人口の減少などの社会問題が顕在化する中、ロボット技術の導入は製造のみならず介護医療、農業、サービスなどさまざまな分野において、問題解決への寄与となることが期待されている。

 日本政府は2014年6月に改訂版「日本再興戦略」を発表した際、「ロボットによる新たな産業革命」を掲げ、有識者による「ロボット革命実現会議」を6回に渡って開催した。会議は産業ロボット関連企業や学識経験者だけではなく、サービス業や政界、ロボットベンチャーからも出席者を募って行われ、そのまとめが2015年1月23日に公開された。

 報告書は2章全92ページにわたり、ロボット大国と言われていた日本の現状、目指すべき方向性、5カ年計画として提案するアクションプランについて記載されている。本稿では報告書第1章にある、現状と方向性について読み解く。

何が問題なのか?

 日本のロボットは工場の組み立て現場などで利用される産業用ロボットを中心に、国際的にも高い競争力を誇ってきた。また、ASIMOなどに代表されるヒト型ロボットの開発でも世界をリードしていた。

 産業用ロボットの出荷額、稼働台数においては現在も国別では世界No1をキープしており、報告書にも「2012年時点において、出荷額は約3400億円、世界シェアの約5割を占める」と記載されている。

 この現状を踏まえた上で、生産年齢減少や社会保障費増大、産業面での国際競争力低下などといった課題を多く抱える「課題先進国ニッポン」と、「ロボット開発における諸外国の追い上げ」といったテーマが挙げられている。

 後者においては米国政府の「国家ロボットイニシアティブ」やGoogleの総額6000万ドルに及ぶロボットベンチャー買収、EUおよび民間企業共同のロボット研究プロジェクト「EU SPARC Project」などを挙げ、その目的をIoT時代の新たなロボット活用の主導権を得ようとするものと推測している。

 ロボット自体についても報告書では、単なる作業機械から自ら学習して行動する「自律型機械への進化」が始まっており、同時に、情報の収集・蓄積を行いサービスなどの源泉となる「情報端末化」と、単体動作するだけではなく相互に連携する「ネットワーク化」も進んでいるとしている。

 つまり、これまで言われていた「ロボット大国・日本」は、単純作業を高速にこなす産業用ロボットの開発製造、運用に長じた存在であり、諸外国の追い上げやロボット自体の進化をキャッチアップできていないと報告書では指摘しているのだ。

 「こうした動きに取り残された場合には、ロボット分野においてもガラパゴス化し、ものづくりでは勝ってもビジネスで負けるという懸念が強まることになる」(報告書より)

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