ドイツの駆動部品メーカーSchaeffler(シェフラー)によると、欧州市場で2016年から導入される見込みの48Vハイブリッドシステムのコストは、フルハイブリッドシステムの半分で済むという。
ドイツの駆動部品メーカーSchaeffler(シェフラー)の日本法人・シェフラージャパンは2014年10月29日、東京都内で会見を開き、シェフラーの技術開発の方向性や日本市場を重視する事業戦略について説明した。
今回の会見は、日本で初開催となる「シェフラー技術シンポジウム」に併せて行われた。同シンポジウムのため来日したシェフラーのCTO(最高技術責任者)兼副CEO(最高経営責任者)を務めるペーター・グッツマー氏は、「当社は、売上高に対する研究開発費の比率について、ティア1サプライヤの中で最も高い水準となる5.5%を維持するなど、研究開発に注力している。ドイツにおける特許登録数も2013年はRobert Boschに次いで2位になった」と語る。
シェフラーが研究開発の方向性を固める上で、自動車のパワートレインの動向は極めて重要だ。グッツマー氏は、「今後10〜20年間、内燃機関は使われ続けるが、電動システムと組み合わせる比率が高まっていくだろう。2013年時点ではハイブリッド車の比率は2%と低いが、2020年に19%、2030年に35%と着実に伸びていく。電気自動車も2020年に1%、2030年に8%まで増える。欧州や日本の厳しいCO2排出削減規制が、この傾向を推し進める」と強調する。
そこで同氏が、CO2排出削減規制への有効な対応策として紹介したのが48Vハイブリッドシステムだ。48Vハイブリッドシステムは、電源電圧を48Vに引き上げたスターターモーター兼発電機やリチウムイオン電池パック、12Vへの降圧が可能なDC-DCコンバータなどを組み合わせたもので、スターターモーター兼発電機を使った走行アシストやブレーキエネルギーの回生が可能だ。トヨタ自動車などが展開しているフルハイブリッドシステムと比べて、通常の内燃機関車に追加搭載するのが容易なことを特徴としている。さらにコストも、「フルハイブリッドシステムと比べて40〜60%ほど削減できる」(グッツマー氏)という。
48Vハイブリッドシステムは、2016年に欧州市場から導入される予定。欧州市場では、2013〜2014年にかけて、フルハイブリッドシステムを搭載するハイブリッド車が16モデル投入されているが、ほとんど大型車だ。AセグメントやBセグメントといった小型車では、搭載スペースが少なくて済む48Vハイブリッドシステムが採用される可能性が高い。
シェフラーは、48VハイブリッドシステムによるCO2排出量の削減効果を見積もるために、同じくドイツの大手ティア1サプライヤであるContinental(コンチネンタル)と共同してコンセプトカーを開発した。Bセグメント車であるFord Motorの「フォーカス」をベースに、48Vハイブリッドシステムや熱管理モジュール、低圧EGRなどの燃費改善技術を盛り込んでおり、CO2排出量を114g/kmから15%減の97g/kmまで低減することに成功したという。今後はさらに最適化を進め、2020年からEUが導入を予定しているCO2排出削減規制値である95g/kmの達成を目指す。
グッツマー氏に続いて登壇したのは、シェフラー オートモーティブ部門 アジア太平洋地域CEOのアンドレアス・シック氏だ。シック氏は、「世界の自動車市場にとって、アジア太平洋市場は極めて重要だ。その理由は、日本と韓国の自動車メーカーが世界の自動車生産に占める割合が40%もあるからだ。この40%という数字は2013年も、2020年も変わらない」と強調する。
日本市場の重視の方針に合わせて、横浜市内にあるシェフラージャパンの本社・研究開発拠点を移転/拡充する。現在の広さは2000m2だが、2015年5月の移転により4700m2に拡大。2020年には6000m2と現在の3倍に広がる。従業員数も現在の270人から、2020年には450〜500人に増員する予定だ。さらに、アジア太平洋地域担当のCTOに就任したジョイディープ・ロイ氏が、シェフラージャパンの本社・研究開発拠点に常駐することも決まった。
シェフラーは、先述したフォーカスベースの車両のように、地域ごとの特性に合わせたコンセプトカーを多数開発している。「今後は、日本市場向けのコンセプトカーも開発しようと考えている。1年程度かけて検討を進め、数年後に開発を完了できるようにしたい」(ロイ氏)という。
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