―― パワーバイザアワーを含むサービタイゼーションは、既存モデルに比べて、どういう利点があるのでしょうか。
コーへン氏 サービタイゼーションを導入すれば、顧客側、メーカー側それぞれにメリットが生まれる。先ほどの航空機のエンジンを例とすると、顧客側から見た場合の利点として、エンジンの信頼性が高まるということが挙げられる。パフォーマンスベース契約の場合、メーカー側はエンジンを稼働させないと料金がもらえなくなる。そのため、エンジンの品質やメンテナンスの質を向上させ、止まる時間をできる限り短くし、常にエンジンを稼働できる状態に保とうとする動きが生まれるからだ。
また、さらにメーカー側の都合のいい情報に振り回されることを抑えられるという利点もある。ユーザー企業とメーカーを比べた場合、メーカーが圧倒的に多くの情報を持っている。そのため、ユーザー企業が知らない間に、不利な契約を結ばされたり、不要なオプションを購入させられたりすることも起こり得る。そうなると、ユーザー側が「求めている価値」と「実際に支払う費用」にギャップが生まれ、大きな不満が生まれることになる。しかし、サービタイゼーションが進んだ場合、これらの知識ギャップでユーザー側が振り回されることなく、求めるパフォーマンスを得られるようになるだろう。
さらに、無駄にモノを販売しようとして、利用できる機器の交換を促すような販促手法を抑えることにもなり、環境負荷軽減にもつながることも考えられる。
一方、メーカー側にとってどういうメリットがあるかを見てみると、収益性を高められるという点が挙げられる。製品を売るより、サービスを売る方が利益を出しやすいからだ。サービスを提供するということは、使ってもらっている間は一定の収益が得られ、継続的なビジネスを獲得でき、顧客を囲い込めるメリットもある。製品は同じでもサービス価値で差別化を行うことも可能だ。
また、製品を開発する上で、顧客の声を取り入れやすくなり、必要な機能を必要なタイミングでリリースすることができるようになる。「大きな投資をして開発した機能だが、オーバースペックで誰も使わない」というような事態を避けられるというわけだ。
―― 企業としてサービタイゼーションを進めるためには、どういうことを考えなければなりませんか。
コーへン氏 サービタイゼーションを企業内で進行させる際には、さまざまな面で変化が必要だ。例えば製品の設計自体をサービスを考慮した形に変えていく必要がある。製品が稼働していないとチャージできないことを考えると、製品の整備や維持の体制もより積極的なものへと変えていく必要性がある。例えば部品が壊れる前とか寿命が切れる前に交換するなど、よりプロアクティブな形に変えていく必要がある。
そして、これらを行うためには、リソースマネジメントがとても重要になってくる。部品の在庫などもそうだが、技術者、コールセンターなど、これらのリソースをどれくらい保持していれば最適なのか、どう管理・運営すれば効率的なのかということが重要だ。モノ売りのビジネスモデルであれば売った後のコストにおいて、メーカー側が保持するものは非常に小さくなるが、サービタイゼーションではほぼ全てのリソースを保持し続けないといけない。その分のコストを吸収する必要があるので、リソース管理および、それらの最適化、効率化は成否のカギを握るといっても過言ではない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.