米Intelの日本法人であるインテルと空調設備大手のダイキン工業は共同で、2014年9月10日に「IoT×空調」をテーマにした“アイデアソン”を実施した。発想の柔軟さが欠けがちな大企業病にアイデアソンは“効く”のか?
モノづくりに携わる企業、とりわけその規模が大きくなると「自由な発想がなかなか出てこない」という悩みを抱えることになる。発想の柔軟さと会社の規模が比例しないというのは、いわゆる大企業病の1つと言っていいだろう。
半導体大手のインテル、空調機器大手のダイキン工業もそうした悩みを抱える企業だ。一見すると無関係に見える2社が共同で「IoT×空調」をテーマにしたアイデアソンを2014年9月10日にベンチャー企業支援のサムライインキュベートの運営にて実施、サムライインキュベートの起業家ネットワークを通じて集まった参加者からの自由な発想を募った。
「PCは売れていない。単価下落もあり、ビジネスとしてPC用プロセッサだけでは先がないことは明白だ」。アイデアソンの開始に先立ち、そう危機感を表明したのが、米Intelの日本法人であるインテルの取締役副社長 宗像義恵氏だ。
宗像氏は米インテルが事業を立ち上げた際に400近く考えたアイデアの内、最も成功したのがIBMの小さなチームと考えたパーソナルコンピュータだったという例を引き合い出し、小さなアイデアでもビジネスとして結実する可能性があるならば積極的に取り込んでいきたいと語った。
「とにかく社内で得られないアイデアを見たい」とコメントしたのは、ダイキン工業の常務専任役員 環境技術研究所 所長の稲塚徹氏。「ダイキンは基本的に空調しか手掛けていない企業だが、冷暖房だけではなく“空気をいじる”と考えたとき、冷暖房以外に何かをできないかという思いがある」(稲塚氏)
今回開催されたアイデアソンの参加者は40名。これを6チームに分けたうえで、参加者が10枚の付せんに思いついたアイデアを書き込んでいき、チーム内で発表する1案を決定。チームの代表者がそれをプレゼンし、投票で優勝案を決定するという流れで行われた。
発表された6チームのアイデアは以下の通り。いずれも空調を冷暖房だけの手段にとどめることなく、センシング技術を絡めることで、室外機を含めたエアコンを使って何らかのデータを取得・活用することを意図しており、なかかなユニークなアイデアが出そろった。
投票の結果、優秀案として表彰されたのは4番のアイデア。IoTという観点では「ニオイで生体情報を記録し、ビッグデータで活用」とやや具体性に欠けるものの、エアコンの設置場所はリビングや寝室に限らないというところから発想を広げ、「狭い場所ならば空気中の成分分析が容易で、空気環境の調整も容易ではないか」と、エアコンに医療・健康機器としての役割を見いだした視点が評価されたようだ。
4番のチームが掲げた「健康」は普遍的なテーマで、それだけに市場からの関心・需要は常に高いといえる。しかし、優秀案以外のアイデアについても、各チームが「どのような需要があり得るか」という発想でブレストした結果として発表されており、作り手目線ではない発想にあふれていた。
インテルの宗像氏も「メーカー側からでは、マーケットインの発想が生まれにくくなっている」と優秀案に限らず、プレゼンで各チームが主張した「需要」の重要性を痛感していた。今回のアイデアソンは単発イベントとして企画されたものだが、ダイキン工業とインテルの両社ともにマーケットインのアイデアが眼前で生み出されていく様子には関心を持ったようで、同一メンバーでの第2ラウンドや、開催地を変えての開催にも興味を示していた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.