米国運輸省の道路交通安全局は、乗用車に車車間通信技術を搭載するための取り組みを本格的に始める。車速や走行位置といった走行時の安全に関わるデータを、車車間通信によって1秒間に10回やりとりすることによって衝突事故を回避できるようになるという。
米国運輸省(DOT)の道路交通安全局(NHTSA)は2014年2月3日(米国時間)、乗用車に車車間通信技術を搭載するための取り組みを本格的に始める方針を表明した。車速や走行位置といった走行時の安全に関わるデータを、車車間通信によって1秒間に10回やりとりすることにより衝突事故を回避できるようになるとしている。
NHTSAでは、車車間通信技術を「V2V(Vehicle-to-Vehicle)通信技術」と呼んでいる。V2V通信技術を使えば、前方を走行する車両から急減速などの事故発生につながる情報が送られてきた際に、事故発生の可能性があることをあらかじめドライバーに知らせることができる。また、事故発生の可能性があるという情報をさらに後方の車両に送信して、玉突き事故などが発生しないようにすることもできる。「V2V通信技術は、シートベルトやエアバッグ、横滑り防止装置(ESC)に次ぐ次世代の安全技術である」(NHTSA)という。
DOTは2012年8月から、ミシガン州アナーバー市で、V2V通信技術の実証実験として「Safety Pilot Model Deployment」を実施している。V2V通信モジュールを約3000台の車両に搭載するという規模の大きさ以外にも、異なるメーカーの車両やV2V通信モジュールの間で通信を行うという点でも、V2V通信技術の実用性を確認する上で注目されていた。実験参加者からの評価はおおむね良好で、将来的に実用化されるのであれば自身の車両に搭載したいという意思を示している。
NHTSAはSafety Pilot Model Deploymentの実験結果を分析しているところだ。数週間後には、V2V通信技術の技術的実現性やプライバシー/セキュリティの問題、現時点で想定するコストや安全面でのメリットを説明した報告書を提出し、パブリックコメントを募集する予定である。
またNHTSAは、V2V通信技術は次世代の自動車に不可欠になると見ており、法令などによる義務化についても提言する方針だ。こういった意向を示すことにより、自動車業界のV2V通信技術の開発が加速し、市場拡大にもつながるとしている。
米国がV2V通信技術に用いている通信規格は、物理層やMAC(Media Access Control)層などの下位層に当たるIEEE 802.11pと、それより上位の層に当たるIEEE 1609.xから構成されるWAVEである。通信周波数は5.9GHz帯を用いており、通信速度は最大で54Mbpsとなっている。欧州は米国と協調路線を敷いており、5.9GHz帯を使って、WAVEと同様の車車間通信技術を導入する方針である。
日本国内における車車間通信技術は、通信規格の下位層がIEEE 802.11pがベースになっている点では米国や欧州と共通だが、周波数として700MHz帯を用いる点で異なる。トヨタ自動車が2010年代半ばを目標に導入を目指している自動運転技術では、この700MHz帯の車車間通信技術を用いる「通信利用レーダークルーズコントロール」によって、より精密なクルーズコントロールを実現できるとしている(関連記事:トヨタの自動運転はプラチナバンドの車車間通信を活用、2010年代半ばに商品化)。
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